2011 Fiscal Year Research-status Report
専門職のキャリアパスと職業的自立性に対する社会的流動性の影響
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23530519
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤本 昌代 同志社大学, 社会学部, 教授 (60351277)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日米仏比較 / 高学歴者 / 社会的流動性 / 研究者・技術者 / 雇用制度 / 受動的転職 / 能動的転職 |
Research Abstract |
この研究は低流動性社会としての日本、高流動性社会としての米国シリコンバレー(2007年~2011年)を調査しており、2012年度はそれらの調査結果の分析を行った。流動性の違いによる日米比較の研究成果については、国内では日本社会学会にて、海外ではヨーロッパ社会学会にて報告している。高流動者社会の特徴として、シリコンバレーでは就業者が自らの能力発揮を求めて厚遇、興味深い仕事へ就くための能動的な転職だけでなく、企業による大量解雇、倒産(リーマンショックの影響も大きかった)などによる受動的転職が多いということ、具体的な一社当たりの勤続年数など、多くは定性的調査で語られてきたことを、定量的にも明らかにした。日本は正規雇用者の身分が比較的守られており、外部労働市場型の社会の人々のような緊張感は少ない。しかし、転職がしにくい低流動性社会では、仕事に動機づけられなくなっても組織にぶら下がる人々も多く、高流動性社会と組織の捉え方の違いが浮き彫りとなった。また日本は非常に長時間労働ではあるため、フォーマルなネットワークとインフォーマルなネットワークの交差機会が極めて少ないが、高流動性社会ではインフォーマル・ネットワークも含めて求職ネットワークとして機能していた。 中流動性社会という位置づけのフランス調査では、インタビューに入る前に現地での類似分野の研究者の探索を行ない、情報共有、現地調査での支援を求めた。少しずつインタビューも進みつつあったが、現地での研究者とのよいネットワークを築くことができ、調査へのステップが飛躍的に進んだ。2012年2月実施の全仏の理系研究者・技術者への調査を行なう機関への参画を許可され、1997年から組織調査に盛り込んでいる自身の重要な調査項目をフランス調査に盛り込むことができた。この調査に関しては、同機関が発刊する2012年6月の報告書への執筆機会を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フランスでの計量調査は、3年計画でなければ困難であると考えていたが、幸運にも全仏の理系の学会、機関で横断的に行われている研究者・技術者への調査に参画することができたため、膨大な数のサンプルを獲得することができた。また、過去20年以上行われてきた当調査の過去のデータの使用も認められたため、経年比較も可能となったことから、想定を大きく上回る研究成果であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計量調査が想定以上に順調に進んでいる一方で、定性的調査も同時に進めていかねば、文化的理解、制度理解については、初動段階であることから、2012年度は計量データの分析から浮かび上がったことについて、より深く理解するためのインタビュー調査、文献精査に努める予定である。 また、データ分析による結果について、フランスの研究者と討論し、より、研究を深める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な使途は、フランスへの渡航費、リサーチ・アシスタント代、翻訳代、テープ起こし代である。 フランスへの渡航は2回を予定しており、2012年度の研究費の55%を充てる。また現地で学術研究の補助ができる博士後期課程の大学院生にリサーチ・アシスタントを依頼していることから、その謝礼として本年度の研究費の30%程度を予定している。その他、資料の翻訳代、インタビューのテープ起こし代に15%程度を充てる予定である。
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Research Products
(7 results)