2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 文男 京都大学, 経済学研究科(研究院), 名誉教授 (40066676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 靖永 京都大学, 経営学研究科, 教授 (70240447)
曳野 孝 京都大学, 経営学研究科, 准教授 (50301825)
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Keywords | 日系家電企業 / 韓国系家電企業 / 新中間層 / パナソニックインド / ソニーインド / 現地化 / 新興国市場 |
Research Abstract |
本年度の研究はアジア、とりわけインドにおけるソニーインドとパナソニックインドを中心とした日本の家電企業のマーケティング戦略の実態調査に基づいて分析研究し、論文にした。ここで明らかになったことは、ソニーもパナソニックのインド参入は1980年代という比較的早い時期に参入し、インドの富裕層を対象に日本やアメリカという先進国向けに開発し成功した商品をインドに持ち込み一定の成功をもたらした。しかし、この先進国向けの商品は、1990年代から2000年にかけて急増し、インドのボリュームゾーンを形成する新中間層のニーズをみたすことができなかったばかりか、価格が高かったために彼らの支持を得ることができなかった。 その間隙ををぬって、技術力もマーケティング力も日系企業の後塵を拝する韓国系のサムスン電子やLG電子が本格的に参入し、現在ではインド市場では日系企業に対して圧倒的優位を保持している。その優位性を保持している最大の要因は、先行していた日系企業をベンチマーケティングするとともに、徹底した現地化戦略を重視し、大量のマーケティング投資を行い、インドの流通業者をはじめ、消費者の信頼を強めていることにある。 現在は日系企業は韓国系企業に対してはフォロワー地位にあるが、上記の失敗の原因を分析し、これまでの高付加価値商品を中心とした先進国型のマーケティング戦略とは決別し、本社のバックアップの下で、インドの中間層のニーズを中心とした低価格重視のマーケティング戦略を立ち上げ、先行している韓国系企業に反撃を開始している実態を明らかにした。インドで見られるこの経験は、先進国中心から新興国中心の21世紀のグローバル・マーケティング戦略の特徴を明確に読み取ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はインドを対象として調査・研究を行った。インドに関する日系家電企業のマーケティング戦略に関する既存の研究が少ないが、幸いインド進出の日系企業、パナソニックインド、ソニーインド、東芝インド、日立インドを中心に現地のジェトロ、日本インド商工会などの協力により豊富な情報が収集でき、研究が能率良く進んだ。その結果、インドにおける日系家電企業のマーケティング戦略に関する論文を書きあげ、「インドにおける日本の家電企業のマーケティング戦略」(マーケティング史研究会編(近藤文男編集責任)『日本企業のアジア・マーケティング戦略』同文舘出版社、第1章と3章収録)を論文にして発表できた
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究はBRICsの一つであるブラジルを対象に調査・研究の予定であったが、変更することにする。それは次の理由による。 21世紀に入りグローバル・マーケティングを対象とする中心市場が、先進国市場から新興国、とりわけアジア市場にシフトしてきている。アジア市場の中でも中国とインドの市場は新興国の中でも相異なる市場であるだけでなく両市場とも1度だけの現地訪問では捉えきれない巨大市場である。前回の調査では、中国では北京や上海という沿岸部のみの調査にとどまっており、またインドではデリーとムンバイの北部市場の調査にとどまっている。そこで今年は中国では成都を中心とした内陸部の調査を行う。インドではベンガルールとチェンナイを中心とするインド南部を中心とした調査研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度予算に対して実支出の差額36,000円が生じた理由は、インド国内での交通費が予算より少なかったことによる。この費用の使用は、調査対象のブラジルから中国とインドに変更したものに使用する。 平成26年度の使用計画は次の通りである。 中国の内陸部成都を中心とする調査に30万円、インド南部ベンガルールとチェンナイの調査に36万円。インタビューのテープおこしに10万円、物品(インドと中国を中心とする資料代、資料整理のためのファイルなど)7万円
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Research Products
(2 results)