2011 Fiscal Year Research-status Report
地域振興のための簿記の役割 -農業・地場産業を対象として-
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23530601
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
戸田 龍介 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00271586)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 農業会計 / 農業簿記 / 農商工連携 / 第6次産業 |
Research Abstract |
昨年度実施した研究の成果としては、これまでの農業簿記が日本の農業の経営効率化に大きく寄与してきたと言い切れない理由として、戦後農地改革によって生じ現在でもその構成比率において多数を占める小規模兼業農家を中心とした全ての農業者に、特殊な記録形式である複式簿記が必要という前提を実務・教育・理論の各面で暗黙理に置いてきたためであることを明らかにしたことがあげられる。 以上の点を具体的に考察するにあたって行ったのが、分析の対象となる農業者のモデル分けである。昨年度の段階では、現在の日本において圧倒的多数を占める小規模兼業農家を「モデル1農家」、ついで、営利的かつ自立的思考を有し農業経営を効率的に行おうとする農家を「モデル2農家」、最後に、農商工の連携により農業の産業化を目指す大規模農業法人を「モデル3農業法人」とした。これらの各モデルにおいて、複式簿記はその役割を発揮しているのか、あるいは発揮し得るのかについて考察を加えていった。 考察の結果、モデル1農家には、複式簿記以前に、そもそも記録自体のインセンティブが働きづらいことを論証した。さらに、農業という対象が複式簿記という特殊な記録形式と相性が悪いことを論じたうえで、モデル2農家にとって必要なのは、複式簿記による記録というより、まずは農業に関する継続的・規則的記録ではないかということを指摘した。そして、農商工の連携により農業の産業化を目指すモデル3農業法人においてはじめて、複式簿記が必要とされる基礎的条件が整うのではと考えた。モデル3農業法人に注目したのは、複式簿記の有効性発揮の可能性が高いと見なし得ただけでなく、雇用創出を含む地域振興最大の担い手と期待される会計主体とも見なし得たからである。以上が、昨年度の研究における成果および暫定的な結論である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実務家が研究グループに加わり、彼のコーディネートにより農家あるいは農業団体へのヒアリング調査がスムーズに行えるようになった。実務家の氏名は岸保宏(がんぼ・ひろし)氏といい、広島で株式会社マスタード・シード22という農商工連携に関する事業を行っている会社で代表取締役を務めている。岸保氏の事前のコーディネートのもと、研究調査したい内容がヒアリング調査において的確に聴取できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究に対する実務家の参加・支援を得たので、このことを最大限生かし、実務家のコーディネートによるヒアリング調査を重ねていく。多種多様なヒアリング調査を通して、昨年度までの農業者のモデル分類に修正・追加を加え、さらに修正された農業者モデルごとに、「地域振興への貢献」および「複式簿記の役割発揮」についての詳細な考察を加えていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な使用としては、各種ヒアリング調査のための旅費がまずあげられる。実際のヒアリングにおいては、交通の便の悪い個所への調査も必要になるため、レンタカー代など正規交通費以外の支出も必要である。また、農家や農業団体への謝礼も、可能な範囲で手当していきたいと考えている。さらに、農業の産業化に対する調査として、都市部における農地貸与等の制度にも積極的に参加したいと考えており、当該制度の参加費の手当も必要である。
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Research Products
(3 results)