2012 Fiscal Year Research-status Report
地域振興のための簿記の役割 -農業・地場産業を対象として-
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23530601
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
戸田 龍介 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00271586)
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Keywords | 国際情報交換 ドイツ |
Research Abstract |
平成24(2012)年度の最大の研究成果は、日本簿記学会の2011~2012年度簿記実研究部会メンバーと共同で著した最終報告書『地域振興のための簿記の役割 -農業・地場産業を対象として<最終報告>』の編集・刊行であり、同著における内容を平成24(2012)年度日本簿記学会全国大会(熊本学園大学、9月9日)において部会長として代表報告したことである(他にも2012年度発表の公表論文多数)。同報告において、複式簿記に基づく農業簿記は、6次産業化に踏み出す農商工連携事業体が農業ファンドから資金提供を受け、当該ファンドに結果報告をする際に真にその有効性を発揮しつつ、さらに地域振興にも資する可能性大ではないかという結論を提示した。この結論を得るために、農業者を5モデルに分類し、さらにそれぞれのモデルの農業者にヒアリング調査を行い、文献のみでは知り得ない情報を入手した。5つもモデル分類とは、戦後農地改革により生じた小規模兼業農家をモデル1、価格決定権を握り農協組織からは自立した志向を有する農家をモデル2、農業法人をモデル3、6次産業化あるいは農商工連携を志向する事業体をモデル4、農業関連上場企業をモデル5としたものである。農業者をひとくくりにせず、幾つかのモデルに分類し、それぞれのモデルにおける記録や簿記会計のもつ意味を、ヒアリング調査を中心とした実態を見つつ考察していった点が、当研究のもつ一つの意義である。そして、モデル1農家にそもそも記録をとるインセンティブがかけていること、モデル2農家が農業に関する規則的記録を重視していること、モデル3農業法人が複式簿記導入の効果をクリアに実感していること、モデル4および5農業団体は複式簿記はすでに経営の大前提に組み込まれていることなどを明らかにしたことも、当研究の重要な成果と見なされるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に実務家の協力を得られたことが大きかった。ここに言う実務家とは、ヒアリング対象となった農家・農業団体勤務者だけでなく、農業税務を専門とする税理士、あるいは農業ファンドの組成にや農業団体への融資に関わる公的機関勤務者や金融機関勤務者達である。彼らのナマの声を収集・分析する機会に恵まれたことが、研究計画を当初考えていた以上に進展させることとなった。付言すれば、当該研究を正式に出版しないかという誘いも受けており、研究の最終年度(平成25(2013)年度)ではぜひこれを実現させたいと考えるまでに、当該研究は当初の計画・想定を超え進展している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したように、当該研究は正式な出版要請を受けるまでに進展しており、研究の最終年度(平成25(2013)年度)ではぜひこれを実現させたいと考えている。したがって、今後の研究計画は、平成24(2012)年度日本簿記学会全国大会(熊本学園大学、9月9日)において部会長として代表報告した『地域振興のための簿記の役割 -農業・地場産業を対象として<最終報告>』をベースに、足りない部分を加筆しながら、最終的に正式刊行物を出版することである。当然、全体の論旨をクリアにするために、上記最終報告書は再構成する必要があるし、足りない部分については新たなヒアリング調査も必要となる。これらの作業を完遂することが、今後の研究の推進方策となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用の大半は、研究の最終年度(平成25(2013)年度)において要請を受けている当該研究の正式出版に必要な経費となる。加えて、正式出版のために、全体の論旨を補強するための新たなヒアリング調査や文献調査が必要となるが、これらに要する諸費用も次年度研究費の一部を占めることになる。
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Research Products
(8 results)