2012 Fiscal Year Research-status Report
国際会計基準のわが国での適用に関する実証研究ー日本基準との水準比較を中心に
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23530605
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
増村 紀子 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (30388334)
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Keywords | 会計基準のコンバージェンス / 国際会計基準 / 会計情報 / 財務報告 / ディスクロージャー / 無形資産 / 研究開発投資 / のれん |
Research Abstract |
研究第2年目の本年は、国際会計基準とのコンバージェンスが進まない一因になっていることが再三指摘されてきているのれんの会計処理について調査した。日本基準下では、のれんは規則的に償却し、かつ必要に応じて減損処理を実施するという会計処理を行っている。しかし国際会計基準や米国基準下での会計処理では、のれんは償却せず必要な時に減損処理を実施するという方法を採っている。 本研究では、まず、日本企業の過去の主な買収事例を検証した結果、買収時には買収先の収益性が非常に高く評価され、のれんの金額が多額に計上されていることを確認した。買収後には、業績を大幅に増加させることができた企業もあれば、大幅巨額損失の計上や売却に追い込まれた企業もある。これらの結果は、貸借対照表に計上されているのれんの金額が、将来の超過収益力を示す適切な指標とはなっていないことを示している。 次に、のれんが将来の業績に対して有する含意を、企業買収によりのれんを計上した日本企業を対象に、実証的に調査した。その結果、のれんの増加は将来の会計上の業績と株価パフォーマンスの悪化のシグナルであることが明らかになった。現行の日本基準に準拠して算定されているのれんは、買収後企業の将来の業績が上昇すると推量できるものではないことが示された。 日本基準下では、のれんの価値は時の経過とともに減少していくので償却が必要という見解に立脚しているので、のれんは規則的に償却し、かつ必要に応じて減損処理を実施するという会計処理を行っている。この会計処理は、上記の結果から鑑みると日本企業ののれんの実質と合致している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、国際会計基準との間でいまなお残る差異のうち、両基準下での会計処理の妥当性をめぐって今なお論争が続いているのれんについて、日本基準下での現行ののれんの会計処理は妥当であることを確認した。この成果は、国際会計基準とのコンバージェンスの一環として日本でのれんの規則償却を廃止するということは、必ずしも財務諸表利用者にとって有用であるということにはならず、日本基準の内容、精度を高めることにはならないという事実の基礎資料となるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
①平成23年度と平成24年度のすべての結果を包括し改めて検討を加え、発展的な事実を追加したい。 平成24年度の結果については、次の検討も追加する。米国基準下ののれんは、国際会計基準下と同様に、超過収益力が低下しない可能性の点で、日本基準下ののれんとは差異がある。このため、米国基準下でののれんについて引き続き調査を実施し、日本基準下での結果との比較検討を行いたい。 ②個々の調査結果について、国内外の研究者と意見交換する機会をもち、随時成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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