2011 Fiscal Year Research-status Report
ハイアールと京セラの管理会計システムに関する比較研究
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23530609
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
水野 一郎 関西大学, 商学部, 教授 (70174034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ハイアール / 京セラ / アメーバー経営 / SBU / 管理会計システム / 中国上場企業 / 経営理念 / 人本主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1990年代に急成長した中国の代表的な企業であるハイアールとアメーバー経営として我が国でも各方面で注目されている京セラの管理会計システムを比較研究しようとするものである。ハイアールのシステムは成果主義に特徴があり、日本的経営を継承している京セラとは違っているものの、市場の重視や日常の計数管理では類似している点も多い。 本研究の初年度である平成23年度の研究計画としては、(1)まずハイアールと京セラに関するこれまでの先行研究を文献的に整理し、各種資料を新たに収集すること、(2)公表されている年次報告書やアニュアル・レポートなども収集し、詳細な検討を加えていくこと、(3)さらにハイアールについては中国現地で新しい資料の収集に努めること、であった。そのために中国の青島市にあるハイアール本社を訪問し、資料収集とともにインタビュー調査を実現させることであった。 これらについては実際に青島のハイアール本社を訪問し(平成23年8月20日)、ハイアール集団の子会社で香港に上場しているハイアール電器の彭家鈞CFOにインタビュー調査を実施し、またハイアール集団の首席財務官で譚麗霞高級副総裁にもお話しを聞くことができた。同時に本社で新しいハイアールの小冊子や書籍を購入することもできた。そしてこれらのハイアールと京セラの研究成果の一端として日本会計研究学会第70回全国大会で「付加価値会計から人本主義会計への展開」をテーマとして研究報告をおこなった(平成23年9月18日)。さらに「京瓷的阿米巴経営的意巍及特征(京セラアメーバ経営の意義と特徴)」と題する招待講演を北京工商大学(平成24年1月4日)および湖南省の湘潭大学(1月7日)において実施し、両大学の研究者との意見交換をおこなってきた。また本研究に関係する場合、会計学以外の学会や研究会にも機会を見つけて積極的に参加し、知見を広めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画として予定していた先行研究を整理し、各種資料を新たに収集することはほぼ達成できており、ハイアール本社でのインタビュー調査も青島の徐国君中国海洋大学教授の協力もあって実現できた。とくに中国企業の業績評価などを理解する上で青島では有力な家電メーカーであるハイセンス(海信集団)および青島ビールの財務担当者にインタビューできたことも大変参考となった。ハイセンスでは李軍監査部副部長と劉江艶財務経営管理センター副主任にお会いし、青島ビールでは干竹明総会計師にお会いした。しかし企業の内部に関わる資料の取得は難しく、限定された時間で十分に聞き取ることは難しかった。また今回は工場内部の見学は実現できなかった。 文献研究ではまずハイアールと京セラに関するこれまでの先行研究を整理し、各種資料を新たに収集できた。公表されている年次報告者やアニュアル・レポートなども過去5年間については収集し、検討を加えてきた。周知のように日本企業である京セラは有価証券報告書をはじめ、アニュアル・レポート、社会・環境報告書、ホーム頁などにおいて多くの情報を開示している。またハイアールについても最近では、香港証券取引所と上海証券取引所にハイアール集団の中でも重要な基幹となる2社(青島ハイアールとハイアール電器)が上場されている関係上、以前と比べれば大変多くの情報が開示されてており、これらについても収集、蓄積してきた。 このような研究活動を踏まえて、日本では会計研究学会全国大会で報告し、中国では北京と湖南省の2つの大学で招待講演をおこなってきたが、研究論文という様式ではまだ発表できていない。この点は次年度の課題であるが、初年度の研究はおおむね計画にしたがって実施されてきており、順調に進展してきたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成23年度中に実施した学会報告や招待講演を研究論文の様式ではまだ公表できていないので今年度はまずそれを実現させたい。さらに本研究の第2年度も資料の収集と文献研究は継続して行い、インタビュー調査も初年度に訪問できなかったハイアールや京セラの工場を選択し、インタビュー調査を実施する。とくにハイアールの資料収集は企業経営や企業会計、管理会計の枠も超えて収集するようにしたい。第2年度の文献研究、インタビュー調査では、ハイアールと京セラの原価計算、およびコーポレート・レピュテーション的側面に焦点をあてて、考察していく。 そして任意で公表されているCSR報告や環境報告書の分析にも力を入れ、とくに中国語、日本語、英語の各版の相違も調査し、重点の差によって各国のステイクホルダーにどのように対処しようとしているのかを検討、解明していきたい。また本年度からは、是非中国会計学会にも参加し、中国の研究者との交流も積極的に進めたい。とくに香港に上場されているハイアール電器の工場が安徽省合肥に立地しているのであるが、私が客座教授を務めている合肥工業大学の朱衛東教授を通じてこの工場を訪問し、インタビューも是非実現させたい。 これらと平行して日本では、京セラ本社、工場を再度訪問し、インタビュー調査を通して、最近の京セラのアメーバー経営の変化と動向を探ってみたい。さらに京セラ以外にアメーバー経営を導入している企業も訪問し、その定着のさせ方についても調査したい。 このように本研究の第2年度からはより幅広い視点からハイアールと京セラを考察していきたい。中国ではハイアールとの比較の観点から中国の家電業界の実態を調査し、京セラについては日本的経営を代表してきたパナソニックの事業部制の変遷を押さえながら、京セラのアメーバー経営の今後の展開方向を考えてみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的はハイアールと京セラの管理会計システムを比較研究しようとするものであり、その研究方法は先行研究の文献研究と同時に、当該企業を訪問調査し、インタビューや現地で収集した関係資料の分析を通じて、両社の管理会計システムの特徴を抽出しようとするものである。 したがって本研究では、文献研究と共に、日本と中国における現地企業への訪問調査と資料収集がきわめて重要であり、必要不可欠である。また中国の研究者との交流や意見交換も大切であり、積極的に学会や大学、研究機関を訪問することによって、人的なネットワークを形成していくこと重要となっている。 こうしたフィールドワークは通常の大学からの研究予算ではまかないきれず、次年度も本研究費の使用計画としては、旅費と資料収集を中心にして本研究費をできるだけ有効に活用していきたい。
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