2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイアールと京セラの管理会計システムに関する比較研究
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23530609
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
水野 一郎 関西大学, 商学部, 教授 (70174034)
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Keywords | ハイアール / 京セラ / アメーバ経営 / 管理会計システム / 経営理念 / 自主的経営組織 / 人本主義 / 中国上場企業 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1990年代に急成長した中国の代表的な企業であるハイアールと日本で現在注目されている京セラの管理会計システムとの比較研究である。ハイアールのシステムは成果主義に特徴があり、京セラとは違っているものの、市場の重視や日常の計数管理では類似している点も多い。とりわけリーダーのカリスマ性や経営理念の重視は、両社とも共通している。 本研究の第2年度である平成24年度の研究計画は、引き続き資料の収集と文献研究を継続して実施すること、そしてインタビュー調査なども前年度に訪問できなかったハイアールや京セラおよびその関係機関を選択し、訪問調査をすることであった。そのために平成24年9月12日に安徽省合肥市に立地する合肥ハイアールの工場を訪問し、閻部長より合肥ハイアール工場の現状や管理会計システム、原価計算方法について説明していただく機会をもった。また9月13日にはハイアールに吸収された旧三洋の合弁企業である合肥三洋にもインタビュー調査を実施し、森本俊哉總経理からお話しを伺った。さらに合肥工業大学経済学院の朱衛陶院長などとハイアールと京セラのアメーバ経営について意見交換をすることができた。 なお平成24年度の研究成果の一端としては日本原価計算研究学会第38回全国大会(2012年9月8日)および関西部会(2013年2月18日)で研究報告をおこなった。とくに後者は京セラの経営研究所で開催されたもので京セラコミュニケーションの方々と議論をすることができた。また平成25年3月には湖南省長沙市にある日系企業の湖南平和堂を訪問し、昨年9月の反日暴動の影響とその後の経営状況についてお話しを伺った。今後の日系企業の方向性を考える上で重要な示唆を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度の研究計画として予定していた先行研究を引き続き文献的に整理し、各種資料を新たに収集することがほぼ達成できており、安徽省合肥市の合肥ハイアール工場およびハイアールに吸収された合肥三洋でのインタビュー調査も合肥工業大学経済学院の朱衛東教授の協力もあって昨年9月に実現できた。 また京セラについても京セラ経営研究所での原価計算研究学会の報告を通して京セラアメーバ経営の導入に関わっておられる京セラコミュニケーションシステムのスタッフの方達と議論することができた。 なお文献研究では、ハイアールと京セラに関する先行研究を整理し、検討してきた。そして各種の新しい資料についても整理できてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究論文は一つだけ公表できたが、平成24年度中に実施した学会報告や招待講演を研究論文の様式ではまだ公表できていないので今年度はまずそれを実現させたい。そして本研究の第3年度も資料の収集と文献研究は継続して行い、インタビュー調査も前年度に訪問できなかったハイアールや京セラの工場を選択し、インタビュー調査を実施する。 とくにハイアールの資料収集は企業経営や企業会計、管理会計の枠も超えて収集するようにしたい。また前年度に深く検討できなかった文献研究、そして実施できなかったインタビュー調査では、ハイアールと京セラのコーポレート・レピュテーション的側面にも焦点をあてて、考察していく。任意で公表されているCSR報告や環境報告書の分析に力を入れ、とくに中国語、日本語、英語の各版の相違も調査し、重点の差によって各国のステークホルダーにどのように対処しようとしているかを検討、解明していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的は、中国の代表的な家電メーカーであるハイアールと日本で現在注目されている京セラの管理会計システムとの比較研究であり、この研究方法は先行研究の文献研究と同時に当該企業やその関連先を訪問調査し、インタビューや現地で収集した関係資料の分析を通じて、両社の管理会計システムの特徴を抽出しようとするものである。 ハイアールと京セラの両社はそれぞれめざましい発展を遂げ、経営業績も増益基調を維持し、近年ますます注目されており、メディアに取り上げられることも多くなり、関係文献や資料も増加してきている。とりわけパナソニックより旧三洋の冷蔵庫、洗濯機部門を買収したハイアールには多くの日本人管理者や技術者が転籍をしハイアールの経営と日本的経営の融合が一部では見られるようになってきた。 そのため例年と同様であるが、日本と中国における現地企業への訪問調査と資料収集、さらに中国の研究者との研究交流や意見交換を図り、人的なネットワークを形成し、また積極的に学会での研究発表なども行っていきたい。こうした旅費を伴う研究活動は通常の大学の研究予算ではまかないきれないため、本研究費を出来るだけ有効に活用していきたい。
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