2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける越境的なリージョナル放送空間の基盤構築のための実践研究
Project/Area Number |
23530638
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
玄 武岩 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (80376607)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 浩平 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50333638)
金 ソンミン 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (60600426)
北見 幸一 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (90455626)
崔 銀姫 佛教大学, 社会学部, 准教授 (30364277)
鈴木 弘貴 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (40337639)
|
Keywords | 国際研究者交流 / 中国:韓国 / 東アジア / リージョナル放送 / 社会性 / ドキュメンタリー / メディア文化 |
Research Abstract |
平成24年6月の日本マス・コミュニケーション学会では、23年度に引き続き、〈日韓中テレビ制作者フォーラム〉に関するワークショップ「東アジアにおけるメディア交流の課題と可能性-〈日韓中テレビ制作者フォーラム〉を事例として」を開催した。10月に韓国で開催された同フォーラムの第12回大会にもメンバー全員が参加し、参与観察およびインタビュー調査を実施した。 7月には東京大学大学院情報学環林香里研究室と国際シンポジウム「放送の公正性とはなにか」を共催した。同シンポジウムでは、韓国で前代未聞の放送のジェネラル・ストライキが展開されるなか、日韓における放送の公正性について問い返し、この地域における越境するリージョナル放送空間構築の可能性についても議論した。 11月には、尖閣諸島・竹島をめぐって東アジア情勢が大きくゆれるなか、慶應義塾大学総合政策学部李洪千研究室との共催で、領土問題とメディア報道に関する国際シンポジウム「領土をめぐる日中韓摩擦とメディア」を開催した。ここでは、研究者とジャーナリスト、放送人が集い、領土問題に対する日中韓メディアの問題を指摘するとともに、ナショナリズムを乗り越える報道のあり方について議論した。 なお、こうしたシンポジウムやワークショップとは別途に、北海道大学東アジアメディア研究センターは独自の財源で、それぞれの国で制作された社会性のあるドキュメンタリーの上映会を行った。平成24年年5月には韓国の基地問題に関するドキュメンタリー映画『JAM DOCU 江汀』の上映会を、立命館大学現代コリア研究センターと協力して京都・東京・札幌で開き、25年3月には水俣病に関するドキュメンタリー番組『記者たちの水俣病』(日本)、ソウルにおける再開発と立ち退きの過程で発生した惨劇を描いた映画『二つの扉』(韓国)を中国で上映する「東アジアメディア文化交流プロジェクト」を開催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メインの研究対象の一つである〈日韓中テレビ制作者フォーラム〉に継続的に参加し、そこから浮上した問題点および課題について日本マス・コミュニケーション学会でワークショップを開催して放送人もまじえて議論を行うことで、同フォーラムの可能性についての研究成果を順調に蓄積している。平成23年には同フォーラムを共催したほか、24年にも国際シンポジウム(「領土をめぐる日中韓摩擦とメディア」)を共催するこなど信頼関係を築き、番組制作者やジャーナリストと研究者が実践的に議論し合う空間形成も徐々に進んでいる。 上記の制度的なアプローチに対して、東アジアにおけるメディア産業と番組の越境的な展開における文化の受容問題に関する研究においても、研究論文の発表や実践的活動をとおして課題遂行に取り組んでいる。個別の分野における映像・番組の受容の問題においては、「核」、「炭坑」、「企業不祥事」(環境)、「家族像」をもって設定したテーマについて、研究発表(玄「反核の思想と無思想-韓国における「原爆」体験のゆがみ」)や論文執筆(玄他「越境する〈ホームアニメ〉‐東アジアにおける『ちびまる子ちゃん』の家族像」)、上映会(「炭鉱、日本と中国をつなぐもの」および「記者たちの水俣病」)等をとおして直接・間接的にその解明に取り組んでいる。 以上、制度面と受容面におけるそれぞれの領域で、当初計画していた課題に取り組んでいる。ただ、平成24年度に予定していた本研究プロジェクトを総括する国際シンポジウムは、同年に領土問題をめぐって日中韓の緊張が高まり、当該問題をめぐるシンポジウムに切り替えることで翌年度に延期することとなった。とはいえ、上記シンポジウムや韓国放送のジェネストに関連する国際シンポジウムを緊急開催し関連論文を発表したように、研究の達成度はおおむね順調であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も引き続き、東アジアにおける越境的なリージョナル放送の構築のためのメディア文化の制度面と受容面における研究を並行して推進していく。その成果については、今年度下半期に本研究プロジェクトの集大成として国際シンポジウムを開催し、そこでの発表を予定している。 〈日韓中テレビ制作者フォーラム〉については、今年度中国で開催が予定されている大会にも公式に参加し、引き続き調査を実施する。同フォーラムの意義および課題については、崔・鈴木が研究報告する予定である。 メディア文化の越境と受容については、玄・渡辺・金が韓国および中国における歴史的・産業的な視点からの調査研究を進めており、同じく上記シンポジウムでの発表を試みる。なお、北海道大学東アジアメディア研究センターが実施する大学院特別演習では、大学院生と東アジアにおける越境的なメディア文化フロー関する共同研究を推進する予定である。 上記シンポジウムでは、東アジア地域の大衆文化の交流におけるコンテンツ流通の産業的な視点や歴史文化的な視点、社会性など価値観の表現や消費からの視点など多岐にわたる領域をカバーする包括的なアプローチをとおして、この地域における情報コンテンツ流通のさまざまな側面を東アジアの公論形成という視点から体系化する。それをとおして、東アジアにおける文化的な相互作用においてテレビ文化がどのようにかかわっているのか検討し、その越境的な展開の可能性について議論する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度より延期された国際シンポジウムの開催に向けて、研究分担者がそれぞれの分野で研究を推進する。さらに〈日韓中テレビ制作者フォーラム〉にも参加を予定しているため、平成25年度研究費は渡航費および調査費、そしてシンポジウム開催のための招請費用にあてられる。 なお、平成24年度に予定していたシンポジウムを延期したことから、その開催費用を翌年度(平成25年度)のために繰り越しをした。したがって、その繰り越し分は25年度上半期の国際シンポジウムの開催費用にあてる予定である。
|
Research Products
(11 results)