2011 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体の総合計画策定におけるジェンダー視点の主流化に関する実証的研究
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23530644
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
渋谷 敦司 茨城大学, 人文学部, 教授 (90216028)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジェンダー / 自治体総合計画 |
Research Abstract |
平成23年度の計画では、平成22年度中に総合計画の策定作業が完結する東海村について、行政評価へのジェンダー視点の導入を提言しつつ東海村のまちづくりで焦点となっている原子力安全・防災対策、科学研究都市づくり、等に焦点をあててアンケート調査等を行うことになっていた。はからずも、この研究に取りかかる直前に東日本大震災と福島第一原発事故の発生により、この調査課題は地域にとって緊急の実践的な課題となってしまった。この実践的課題に応えるために、平成23年度中に代表者渋谷は、3つのアンケート調査を実施、その結果を年内に公表して、福島第一原発事故が茨城県住民に与えた影響、事故後に県内の原発再稼働に対して住民がどのように考えているのか、等を明らかにした。これらの調査結果は、新聞各紙でも大きく取り上げられ、東海村をはじめとした原発立地・周辺自治体の政策意思決定に重要な判断材料を提供することができたと考えている。また、原子力問題とジェンダーの関連性を意識して調査結果を分析することにより、科学技術政策や自治体総合計画の中での原子力の位置づけに関連づけてジェンダーの問題を研究するという当初の研究計画について、より具体的で実践的な政策意思決定の場に踏み込み、研究結果をふまえた政策課題の提示ができたと考えている。本年度の調査結果は調査結果概要としてマスコミ等に公表すると共に、原発事故を考える東海村主催のパネルディスカッションや公開講座、東海村の総合計画の一環である「原子力センター」懇談会などの場で問題提起の素材として紹介してきており、研究初年度において、研究成果を社会的に還元するという点でも十分な実績を上げたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた防災や原子力政策についての地方自治体総合計画策定上の課題をジェンダー視点から明らかにするという目標に対して、東日本大震災と福島第一原発事故後の現実をふまえて、アンケート調査を実施し、それをふまえて各自治体の総合計画審議会などの政策意思決定の場で問題提起をするというかたちで活用できた。これは震災と原発事故という不幸なできごとによって余儀なくされた結果でもあるが、計画以上の成果につながったことも事実である。
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Strategy for Future Research Activity |
原子力問題とジェンダーの関連性については、社会心理学的な原子力関連意識の男女差分析などを理論的に克服する作業として、平成23年度実施分のアンケート調査結果を活用して、論文をまとめる予定である。また、科学技術政策や自治体総合計画の中での原子力の位置づけを考える作業については、地域防災計画の見直し作業などを通じて自治体の政策審議過程に委員として参画しつつ、計画策定の基礎データとなるようなアンケート調査を新たに実施することを予定している。また、大洗町などの県内観光地の震災復興という課題と関連して、当初の計画でも予定していた福島県内の観光地の地域作り、原発事故からの復興状況について、事例調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンケート調査の実施に約80万、福島県内の事例調査旅費として約10万を予定。その他に、文献資料購入費として約30万、消耗品費として約10万を予定している。
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