2012 Fiscal Year Research-status Report
社会的排除と反グローバリズム運動:底辺からの新しい共同性創出の可能性
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23530645
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (40302335)
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Keywords | 社会的排除 / フランス / 社会運動 / 都市底辺層 / 貧困 |
Research Abstract |
本年度は、反社会的排除を掲げる社会運動が短期的に、個人が生存のための物質的な要求を達成することを目的とするのではなく、長期的なオルタナティブを貧困を経験する当事者がどのように構想しているかを明らかにすべく、インタビューと参与観察を行った。 具体的には、フランスと日本の都市底辺層の社会運動の担い手が、社会運動を貧困問題を解決する手段として位置づけるのみだけでなく、社会的排除社会に対するオルタナティブな社会を生成する場として、どのような営みを行っているかについて調査を行った。 日本では日本人および移住者の活動家12人に対するインタビュー調査および公園占拠の場における参与観察を行った。フランスでは、おもに住宅への権利運動を担う移住者の活動家5名に対して、住宅占拠運動についてのインタビューおよび参与観察を行った。 日本では、野宿者運動に端を発した社会的排除に抗する社会運動は、従来は野宿労働者と雇用主の直接の交渉が中心であり、国家による仲介といえる裁判闘争に訴えることはなかった。その延長で野宿者支援が中心になってからも、生活保護の受給を要求するよりも、仕事作りなど国家の仲介によらないオルタナティブが目指される傾向にあった。また、先行研究が指摘する、新たに自己のアイデンティティを定義する場所として位置づける傾向もみられた。 一方フランスでは、アウトノミア系の若者が運動のための運動として行う住宅占拠をのぞいては、国家に対する異議申し立てが基本である。住宅占拠も、住居を得るためであると同時に、裁判闘争を闘うための手段として位置づけられている。日本の先行研究で指摘される「居場所」としての機能はほとんど求められておらず、共同性の発現は日本とは異なる形をとると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたインタビューの件数をほぼ達成しており、このまま進めれば、最終年度には予定していた数のインタビューを終えて、研究成果を論文にして公表することできる。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにインタビューの数を増やすとともに、調査結果開示のための研究ノートと論文執筆を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に予定どおり実施できなかった調査対象のフランスの市民団体に対するインタビューを行う。
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Research Products
(5 results)