2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530691
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
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Keywords | 移民政策 / 統合 / 国家 / 庇護権 / 庇護妥協 / セキュリティ / ドイツ |
Research Abstract |
今年度の研究は、主として3つの方向で進めた。 第一は、最終年度ということもあり、ドイツ連邦共和国(以後「ドイツ」)の戦後の移民政策を包括的に整理した。ドイツの移民政策は、国外からの移民を大量に受け入れていた1972年までの移民流入期、1972年以後1998年の赤緑政権(シュレーダー政権)成立時までの「非移民国の外国人政策」期、そしてその後現在まで続く「統合の国」として移民統合期に時期区分することができる。この第一のテーマに関する研究成果は、現代ドイツ政治に関する一章として寄稿した論文に示されている。 第二は、統一前後に庇護請求者が急増する中、外国人嫌悪の暴力事件が多発した時期における基本法改訂論争の分析である。結果として、当初は庇護権改訂に反対していた野党の社会民主党が改訂に同意したことによって基本法は改訂されるのだが、なぜ社会民主党がそのような「妥協」するに至ったのかを解明しようとした。当時の新聞を見てみると、庇護請求者の受け入れを負担する各地の市町村で、庇護請求者の宿泊施設の収容量が限界に達し、地方の住民や政治家の間から不満の声が表明されていたことがわかる。このような「下から」の声を受けて、社会民主党の首脳部は「庇護妥協」に踏み切ったものと思われる。また、この庇護妥協がその後の移民政策の転換にもつ歴史的意義についても考察した。このテーマに関しては、今年度末には成果をまとめる予定である。 第三は、前年度から継続して、国家の機能不全と排外主義(特にイスラモフォビア)との関係についての考察である。昨年度の段階での成果は、今年度「ドイツの排外主義」という論文として世に問うことができたが、それをさらに発展させ、「国家と移民統合」というテーマで研究を続けている。そのための下準備として、近代国家と社会との関係を歴史的に分析した研究の成果である『国家の社会学』が今年度末に脱稿した。
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