2013 Fiscal Year Research-status Report
支援と受援の社会学:災害に関わる市民活動に焦点をあてて
Project/Area Number |
23530711
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菅 磨志保 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)
|
Keywords | 災害に関わる市民活動 / 東日本大震災 / 広域連携に基づく支援体制 / 受援力 / 原発(広域)避難 |
Research Abstract |
本申請研究初年度に発生した東日本大震災により、本研究に関わる事象が大きく動いた。そこで研究の基本的な枠組みは維持しつつも、この震災で発現した新たな課題の把握にも努め、そこから得た知見を組み込みながら分析を進めた。申請時に設定した4つの研究領域における今年度の研究実績は、以下の通りである。 (1)災害救援:東日本大震災から3年目を迎え、民間の活動基盤強化(統合化と資源確保)と民間-政府の連携体制づくりに向けた有識者会議がそれぞれ設置され、これらに参画。会議を通じて、実践団体に過去の経験(99年の官民連携の試み等)や、全米災害救援機構(NVOAD)に関する知見(領域(4)で収集)を提供しつつ、今回の体制構築の課題を検討した。公的セクターとの連携ではトップダウン型の指揮系統に入って活動できる体制構築が求められる一方、過去の国内の災害対応で尊重してきたボトムアップ型の活動原理や、共同的な実践を可能にする体制も必要であり、両者をいかに両立させていくかが今後の実践的課題であることを指摘した(代表者による分担執筆)。 (2)復興-減災:原発事故の強制避難自治体との連携協定に基づく避難者調査や、避難当事者団体による支援活動や研究会に参画。原発避難と避難者支援の問題構造に関する一定の分析結果をまとめる(連携研究者の共編著書)と共に、学会の場(代表者による特設セッション企画)で、状況認識の共有を図った。 (3)討議の「場」:引続き領域(1)(2)の会合に参画。過去の知見を提供しながら観察を継続した。また(2)で行った避難当事者の意見交換会録の可視化を検討した(分析は「質的統合法」の専門家に依頼。来年度一連の記録を別枠でまとめる予定)。 (4)文献調査:今迄十分に行えなかった海外の文献収集に力を入れた。特にNVOADに関する情報は(1)で求められ提供したが、理論的検討に資する文献は十分に得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)の領域では、東日本大震災の対応経験を踏まえた新たな連携体制の検討が現在進行形で動いているため調査を終え難いこと、また、震災から3年間の実態に関する情報が集約されている各種資料・報告書の入手が遅れている(印刷中)ことが、達成度を「やや遅れている」とした第一の理由である。 また、申請段階では、研究の前提として想定していたのは局所災害であったが、将来の巨大災害への対策の検討につないで行くためには、今回の巨大災害への対応を踏まえる必要があり、(今震災に関する)幅広い情報収集と分析が必要であるという認識から、実態調査にウエイトを置いて研究を進めてきた。そのため、過去の知見の再整理や分析に関する検討が、若干遅れていることも(「やや遅れている」とした)もう一つの理由である。 その他、経済復興支援活動に関しては、研究よりも実践を進める必要性があったため、今年度は研究協力者であるNPOによる事業化を優先してもらい、調査研究は、来年度改めて実施することとした。 また、今年度は、当初計画では最終年度に当たるため、質的研究の方法や事象の分析枠組みに関する検討にも力を入れた。とりわけこれまで十分に行えなかった海外の文献調査に力を入れた。ただし、理論の検討に資する文献は十分には集められなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災から3年目を迎え、各種資料・報告書がまとまりつつあるので、それらを収集し、これまで蓄積してきたデータに加えて、暫定的な総括(研究の対象となる事象は現在も動いているため)を行う。 但し、領域(2)の原発避難に関しては、今年度2年半の事象から一定の知見の取りまとめができ(連携研究者による共編著書)、かつ、支援をめぐる問題構造に関しても、学会の場で関係者と状況認識の共有を行い(研究代表者による特設セッション「原発避難と支援」の企画)、一つの区切りができたが、その後の事態の展開が激しく、今後の先行きが読めないことなどから、来年度、新たな枠組みで調査研究を継続することを計画している。また経済復興支援活動に関しても、実践を優先すべきという観点から、現場の要請に合わせた枠組みで調査・支援活動を継続することを検討しており、来年度は領域(1)を中心に、(2)に関しては、事象の総括よりも、これらの事象を対象に行ってきた研究の方法論や分析枠組みに関する検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請研究は災害と支援をテーマとしており、研究所の初年度に発生した東日本大震災の影響を大きく受けることとなった。当初予定していた研究課題に加えて新たな課題が浮上したり、調査対象者予定の団体の調査が、一時的に難しくなった。しかしまさにこれらのテーマに関する研究が求められる状況である。震災から3年目を経て現場の資料がまとまり出しているので、それらを含めて研究を取りまとめたいと考えている。 主として(1)調査旅費(被災地東北や各地に拠点を置く支援団体事務局での調査をはじめ、活動資料の収集、および支援団体等の意見交換会への参加を含む)、(2)文献・資料購入代、(3)研究成果の取りまとめと発表に係る謝金(聴取記録の作成等)・旅費などを予定している。
|
Research Products
(7 results)