2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジア国際システムの転換と日本医療保険制度の展開、1920年代~1950年代
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23530722
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉田 米行 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00216318)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ワシントン体制 / 医療保険 / 健康保険 / 国民健康保険 / 福祉国家 / 社会福祉 / 社会保障 / 社会保険 |
Research Abstract |
平成23年度は、ワシントン体制と健康保険制度の形成の連動性およびアジアのブロック化と国民健康保険制度の形成の連動性を検証することに主眼を置いた。そのために、コーポラティズム理論、ワシントン体制、大東亜共栄圏、健康保険法制定過程、国民健康保険法制定過程等、個別事項に関する過去の研究業績を読みこなし、分析枠組みの概念を精緻化するとともに、研究史の整理を行った。このために必要な書籍等を購入した。この研究整理を基礎にして、国会図書館、東京大学図書館、防衛研究所等に存在する一次資料を網羅的に収集・分析し、東アジアにおける国際関係の変容と日本の医療保険制度の展開に連動性があるという仮説を検証していった。その過程で、ジョン・ヴァンサント先生(アラバマ大学准教授、日本史研究者)、川村亜樹先生(愛知大学准教授、アメリカ文化研究者)、ハラルド・フス先生(ハイデルベルク大学教授、日本史研究者)を大阪大学に招聘して意見交換、セミナー等を開催し、本研究テーマに関する理解を拡大・深化させることができた。また、平成23年12月10日から平成24年1月17日までドイツのハイデルベルク大学に滞在し、資料収集、日本史研究者らとの意見交換および本テーマに関する研究発表・セミナーを開催した。このように、資料収集、分析、意見交換を行うと同時に、英文にて本テーマの研究成果を欧米の学術雑誌に投稿するために、英文校閲サービスを利用した。以上のように、平成23年度は予定していた計画をほぼすべて実施することができ、順調に進んでおり、平成24年度の研究計画につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、1920年代の国際協調体制(ワシントン体制)と健康保険の形成過程、1930年代後半からの大東亜共栄圏構想と国民健康保険の形成過程、厚生省の重要性、1942年の健康保険・国民健康保険の重要改正等の関係を一次資料を用いて検証することができた。医療制度における従来の研究を精査すると、この問題が純粋に国内問題であり、官僚、医師会、関係学者、実業界など利益集団間の権力闘争によって、日本の医療保険制度が展開していったという共通の認識が見られたが、一次資料を精査すると、医療制度の展開において、国内政治過程は直接的に関与するもので、大変重要なものだが、その下地を作り上げていった国際要因も、少なくとも間接的要因として重要な役割を果たしていたという新しい知見を確認することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1930年代後半からの大東亜共栄圏構想、連合国軍占領期における国際関係からの隔離、1950年代の日米同盟体制という日本を取り巻く国際関係の変容に連動する形で、日本国内に医療保険制度が形成されていったという仮説を一次資料を用いて検証していきたい。そのためには、医療保険をめぐる日本国内の政治過程と国際政治経済との関係、日本の再軍備、冷戦の激化、米国の巨大な軍事力等、国際問題の視点を取り入れて日本の医療保険制度を分析したい。特に、東アジアにおける国際関係の変容と日本の医療保険制度の展開に連動性がある、という仮説をたてているが、その真偽・修正の必要性等を一次資料を分析しながら検証したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、1930年代後半からの大東亜共栄圏構想、連合国軍占領期における国際関係からの隔離、1950年代の日米同盟体制という日本を取り巻く国際関係の変容に連動する形で、日本国内に医療保険制度が形成されていったという仮説を一次資料を用いて検証したい。そのために、国会図書館、東京大学図書館、慶應義塾大学図書館、防衛研究所図書館に所蔵されている一次資料の収集分析のために、旅費、複写費を活用したい。さらに、当該分野の研究者を大阪大学に招聘し、意見交換、セミナー等を開催したい。また、研究成果を欧米の学術雑誌に投稿できるよう英文校閲サービスを活用したい。さらに、研究成果を海外で口頭発表できるように、旅費を活用したい。
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Research Products
(3 results)