2013 Fiscal Year Research-status Report
低酸素脳症者の実態、生活支援、社会支援についての多施設協同研究
Project/Area Number |
23530748
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
先崎 章 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20555057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦上 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, その他 (00465048)
花村 誠一 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (40107256)
大賀 優 東京医科大学, 医学部, 講師 (10251159)
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Keywords | 低酸素脳症 / 記憶障害 / 高次脳機能障害 / 発動性低下 / Glasgow-Pittsburg / 一酸化炭素中毒 / 介護負担 |
Research Abstract |
「低酸素脳症者の気分状態と健康関連QOLの定量化の研究」認知リハを受けた38例にて、現在の社会的状況、気分状態(POMS)、記憶障害(RBMT)、健康関連QOL(SF-8 TM)を調査したところ、就労群と非就労群とも高い抑うつ気分(D)を示した。在宅生活(家事なし)群は、就労群、在宅生活(家事あり)群と比べて、全体的健康度や日常生活役割機能(精神)が低い傾向にあった。 「記憶障害の経過、家族支援、社会支援研究」低酸素脳症者18例のRBMTの得点の変化(1回目は受傷後1ヵ月以上1年以内、2回目は1回目より6ヵ月~1年後)を他の脳損傷(びまん性軸索損傷23例、局所脳挫傷48例、前交通動脈瘤破裂21例)と比較したところ改善率、改善のスピード、重症度カテゴリー改善率とも低酸素脳症者が一番低かった。低酸素脳症者15例を含む脳損傷者42例で、主介護者がTBI-31、Zaritを1年間の経過前後で評価したところ、TBI-31の変化とZaritの変化とは有意に相関(相関係数0.53)していた。 「救急医療機関における院内心肺停止患者についての予後」院内で心肺停止した41例中、蘇生成功は27例(66%)で、院外心肺停止搬送患者の蘇生成功率より3倍高かった。しかし30日以内死亡率は80%で、永続的蘇生成功6例においてリハがなされたのは1例のみであった。 「Glasgow-Pittsburg脳機能・全身機能カテゴリーを用いた中長期的な臨床経過研究」心肺機能停止があって蘇生されリハ入院となった42例を、発症後1ヵ月の時点でのカテゴリーで分類し、退院時とその後のFIMと転帰を検討した。CPC/OPC4の12例とCPC/OPC3の30例とでは、その後のFIM経過が大きく異なった。脳外傷群と比較すると、CPC/OPC4、CPC/OPC3とも低酸素群のほうが退院時FIMが低く、その後の転帰も悪かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「社会支援の視点がまだ不十分な点」 対象者の機能障害や能力障害が多様であり、利用している(いた)社会資源を一律に数値化することが難しく、社会支援関連の調査研究が遅れている。外来通院者および当事者の会の協力を得て調査したが、地域資源の内容や質に地域差があり、客観的に内容を吟味し数値化することが難しかった。そのため研究実績だけでみると、客観的な数値でのデータがそろう救急医療やリハビリテーション場面での実態報告が相対的に多くなってしまった。 「現段階では施設ごとの調査・研究でややまとまりに欠ける点」 対象者の機能障害(身体障害も含む)の程度が施設によって予想以上に様々であった。生活支援、社会支援ということを念頭におく場合に、身体障害が重い例(麻痺や失調が重度の、いわゆる寝たきりの例)から、障害が外見からはわからない例(身体障害がなく、就労を目指す例)まで幅が広く、24年度と同様に施設の特徴を生かした調査・研究を実施した。 その個々については施設毎にまとめられ論文化されたが、それらを集約し総説を作成する作業に時間を要している。 「事例検討研究の遅延」 量的な検討のみでは、生活支援、社会支援の具体的なあり方についての問題提起が脆弱になってしまうため、質的な検討(事例検討)をまとめていく予定にしていた。症例は現在もその過程途中にあり、生活支援、社会支援の現状と問題点、今後の方向性を明らかにする作業に、予想外に時間と手間がかかっている。 「ICF研究の遅延」 ICFコアセットの日本での可能性についての論文執筆、脳外傷者ICFコアセット日本語版の信頼性と妥当性についての論文執筆が遅れている。これはこの分野で前例とする調査・研究がなく、24年度に発表した内容を発展させる作業に手間取ったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
「総説の作成」 最終年度にあたり研究代表者は、これまでに各研究者、研究協力者が発表してきた研究と印刷物の内容を中心に、一つの総説にまとめ「現在の日本の医療・福祉システムの中で、低酸素脳症者に対する定型だった生活支援、社会支援のあり方を提言する」意図で冊子にして、関係機関に配布する。 「各施設毎のまとめ」 各研究者にあっては、各自のこれまでの研究内容をできる限り文章化、論文化する。まとめる場合には、東京医科大学茨城医療センター(救急医療機関であり急性期、重症者)、神奈川リハビリテーション病院(回復期~生活期、重症者が多い)、国立障害者リハビリテーションセンター(回復期~生活期、あらゆる層が含まれる)、埼玉県総合リハビリテーションセンター(生活期、軽症者が多い)それぞれの対象の層の違いを意識して行う。 「事例検討」 社会支援の在り方について言及する際に参考となる症例を集めて事例検討の冊子を作成する。研究代表者にあっては25年度に新たに低酸素脳症当事者の家族会と意見交換ができたので、当事者や介護者がこれまでの地域で模索してきた過程や、意見も取り入れて、地域での生活支援、社会支援に関する論文を作成する。 「精神医学的検討」 また、うつや自殺未遂が絡んだ背景が複雑な症例について精神医学的、社会福祉的な観点から検討する。その成果を、精神神経学会にて発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「全体での研究」 低酸素脳症者の実態と援助について総説的な論文と事例報告書にまとめることが遅れ、研究報告書作成費用、英文翻訳費用、印刷代、および事例検討の調査、印刷代を来年度に必要とすることとなったため。また全国の関係者団体、病院、施設等に配布する費用、郵送代を来年度に支出することとなったため。 「事例検討、社会支援研究」 事例検討の報告書ならびにICFコアセットに関する論文を作成する費用が必要となったため。低酸素脳症当事者の家族会との事例研究を行うため。以上により次年度に使用額が生じた。 「全体での研究」 平成25年度より繰り越した研究費の一部を、これまでの研究内容の論文(総説)作成費用(英文校正、印刷代、出版代等)に充てる。平成26年度の研究報告会、日本リハビリテーション医学会、日本精神神経学会、日本高次脳機能障害学会等の発表出張費用に充てる。「研究成果の社会への還元」報告書の作成、印刷代、全国の関係者団体、病院、施設等に配布する費用に充てる。 「事例検討」 社会支援がうまくいったケースについて論文や報告書にし、上記総説の各論とする。研究費の一部を、これら論文作成にあたっての費用(英文校正、印刷代、出版代等)に充てる。「ICFに関する研究」ICFコアセット(簡易版)の日本での現状と使用方法について論文にする費用に充てる。脳外傷者ICFコアセット日本語版(簡易版)を報告書にて公開する費用に充てる。
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Research Products
(28 results)