2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530777
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大友 昌子 中京大学, 現代社会学部, 教授 (30060700)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 台湾、韓国、パラオ共和国、樺太、アメリカ |
Research Abstract |
研究成果1.「東アジアにおける福祉文化的基盤の比較研究」のテーマに沿い、これまで収集した台湾、韓国、中国のデータ整理を行った。2.新たなデータ収集として韓国釜山の歴史館において、日本統治期朝鮮総督府文書を収集し、朝鮮半島に特徴的な福祉文化的基盤の1つである「郷約制度」とこれに対する地域政策を明らかにするデータを入手した。また、韓国の歴史研究者と意見交換など交流を行った。3.「東アジア」内の各国・地域の比較研究を進めるなかで、「東アジア」そのものをトータルに把握し、理解する必要性が浮上し、中華福祉文化圏の特徴を示す「東アジア」そのものを相対化するために、東アジアとは異なる文化圏との比較研究が必要となった。4.そこで、ミクロネシア文化圏の代表例として、パラオ共和国の福祉文化的基盤の調査を行った。比較のうえでは比較可能な軸が必要であり、パラオは日本統治という歴史を「東アジア」と共有することから調査対象として選択した。5.パラオ共和国では、子どもの養育と高齢者扶養をつうじて福祉文化的基盤を明らかにすることとし、聞き取り調査や実態調査を行った。パラオ共和国は現在、アメリカによる政治的軍事的支配下にあり、独立国とはいえ、外交権などの政治的主権が制限されている。しかし、ミクロネシア文化のもつ親族ネットワークは今日も健在で、多くの婚外子が生まれるが、彼らを養育する担い手に不足がない。また、高齢者扶養も親族ネットに支えられている。こうした「東アジア」福祉文化的基盤を明らかにするうえで、ミクロネシアの文化圏が有効なヒントを提供してくれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査の実施にやや遅れが生じているが、東アジアの中華福祉文化を検証するための歴史的資料を入手し、またパラオ共和国という異なる文化圏との比較によって、学術的見識が深化した。
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Strategy for Future Research Activity |
「東アジア」の福祉文化圏の特徴を明らかにするためには、異なる福祉文化圏との比較が必要で、研究方法論を含めてスケールの大きな視野をもって、学術的調査研究を進める方針である。これまで研究に着手している台湾、中国、韓国、に加えパラオ、樺太南部など歴史的共通性を有する地域を拡大して調査を行う。さらに、東アジアの一角としての日本の福祉文化的基盤を明らかにする必要があり、このため、日本の近代社会事業の発達に影響を与えたアメリカにおける知的障害児施設の資料中に、内村鑑三等の資料現存の情報があることから、これも視野に入れた研究を実施する。福祉文化的基盤の研究は国家単位では難しいところから、国家の枠を超えた文化単位や地域文化単位で考察し得る学問的方法論を推進したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際比較をテーマとするフィールド調査であることから、調査旅費が研究費の主要な部分を占める。2011年度は7月に右手骨折のため、夏期調査が実施できなかった。このため次年度のフィールド調査で欠けた部分や地域、文化圏に拡大して研究を推進するとともに、東アジアの一角である日本を相対化するために、近代形成期の明治期に多くの留学生を受けいれたアメリカで、160年の歴史を有する障害者福祉施設での資料調査を行う。
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