2011 Fiscal Year Research-status Report
里親支援機関事業創設期の諸課題~里親委託推進と支援の構成要素、類型化に関する研究
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23530801
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
横堀 昌子 青山学院女子短期大学, その他部局等, 准教授 (10289879)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 家庭養護 / 家庭的養護 / 里親養育 / 里親支援機関事業 |
Research Abstract |
平成23年度は社会的養護が大きく動き、里親支援が重要検討事項となった時期であった。そこで、まず政策や里親養育・支援に関する動向の把握、先行調査研究や資料整理を手がけた。そのうえで以下のことを行った。(1)里親や養親、委託されていた子ども、里親支援機関事業担当者、自治体職員等にヒアリングを行い、里親家庭および養育支援ニーズの検討を試みた。(2)国際的な状況を把握するため、国際フォスターケア機構、IFCO(International Foster Care Organization)主催の世界大会、第16回カナダ・ヴィクトリア大会に参加し、情報収集を行った。社会的養護の当事者による意見表明のあり方、里親家庭への支援、家庭を移行する子ども・養育者への支援、実親や養育者との分離をめぐるグリーフケア、支援者支援等のトピックスについて考察した。(3)里親支援機関事業の先行調査研究において指摘された事業の課題や今後の展開の可能性を抽出し整理した。(4)平成23年度厚生労働省発表の資料で里親委託率の進展に実績をあげていた、児童相談所直営型である大分県および大分県里親協議会への訪問事例調査を実施した。その成果をふまえ「里親制度の推進に向けて~市町村・地域との連携、里親支援のあり方を検討する」と題した日本子ども虐待防止学会第17回いばらき大会の分科会で指定討論者として発題した。 (5)里親ソーシャルワークのあり方に関して関連研究会に参加、里親支援の構成要素や理論化に向けた課題を検討した。(6)本研究と関連し筆者が手がける、里親支援機関事業の一環としての里親家庭訪問支援事業担当者へのスーパーヴィジョン業務がある。その分析とともに、先行実践から抽出される家庭訪問事業の意義と抱えがちな構造的な課題、今後の展望を本研究の一環として整理し、第12回日本子ども家庭福祉学会全国大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会的養護をめぐる政策動向に動きがあったため、平成23年度は研究方法等を調整しながら本研究を進める必要が生じた。また、全国的には、里親支援機関事業の民間委託は自治体にとって差異があり、各自治体とも、厚労省の方針を見定めながら今後の里親支援のあり方やその展開を模索する時期でもあった。そこで、里親支援機関事業の本実施を迎えた平成23年度に予定していた全国の自治体への郵送によるアンケート調査については、事態がやや流動的であったことから、再検討の必要を感じ、先送りすることとした。一方、研究上必要な資料については、平成23年度に入手可能なものについては最大限取得することができた。 里親支援機関事業の実践事例として、大分県の訪問調査を手がけた。厚生労働省が平成23年度に公表した資料によると、NPO法人に事業を委託した福岡市に次いで里親委託率が全国2位になった自治体である。事業の、自治体主導による児童相談所直営型モデルの事例として取り上げ、調査研究成果を、日本子ども虐待防止学会第17回いばらき大会分科会「里親制度の推進に向けて~市町村・地域との連携、里親支援のあり方を検討する」の指定討論者としての発題に組み込んだ。 また平成23年度には、次年度に予定していた研究内容を一つ前倒しして行い、第12回日本子ども家庭福祉学会全国大会で発表した。それは、里親支援機関事業の一環として、モデル事業の段階から筆者がスーパーヴァイザーとして携わってきた里親家庭訪問支援事業の成果や課題を、本研究の一環として分析・整理したものである。事業の制度化以前から里親家庭訪問事業を実施してきた民間の先行実践例からくみとれる成果や意義、構造的課題をふまえ、事業としての課題と展望を提示した発表であった。事業本実施の年度に公表することで、より社会貢献につながるのではないかと判断し、行った。 以上が評価の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
諸状況から判断し、全国の自治体へのアンケート調査を実施しなかったこと、そのためのデータ整理を見込んで計上していた調査研究補助が不要となり謝金を必要としなかったこと、訪問事例調査を平成23年度は1か所にしぼったことなどから、平成23年度の研究費に残額が生じた。 平成24年度は、平成23年度に手がけなかった研究内容についても、再度吟味しながら、可能と判断されるものについて、研究方法を精査して進めることとする。 継続実施を計画している里親支援機関事業受託先の訪問事例調査に関しては、事業の民間委託の可能性を模索するため、社会的養護施設が事業受託した事例(施設受託型)を対象とし、すでに本研究を開始する前に筆者が収集していた先行研究での基礎データをふまえ、改めて対象を選定し調査内容を構成して行う。中でも、既存の社会的養護資源である乳児院や児童養護施設等、入所型施設が事業を受託する意義、里親支援に際しての構造的課題、期待される役割、他機関との連携等をめぐって、情報収集・検討・考察を進める。 あわせて、必要な情報収集のため、研究会・関連学会等への参加による情報収集や、筆者自身が小研究会を開催することによる関係者のヒアリング等を平成24年度も継続して進める。一連の研究のプロセスを通し獲得した研究成果については、学会発表や学会誌への論文投稿等を検討し、関係専門職への貢献に結びつけるともに関係者との協議の機会を得ることにつとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に引き続き、平成24年度は、以下のように研究費を使用する計画である。 里親支援に関する先行研究や文献・資料収集、研究上必要な物品購入、研究に関連する学会や研究会参加による情報収集、里親や関係機関・里親支援関係者の訪問や関係者との小研究会の開催によるヒアリング、里親支援機関事業を受託している社会的養護施設や施設併設の児童家庭支援センター等への訪問事例調査、(必要と判断された場合には)郵送により実施するアンケート調査、調査研究で得たデータ・情報の整理、学会や研究会等での研究成果の発表等。
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