2012 Fiscal Year Research-status Report
里親支援機関事業創設期の諸課題~里親委託推進と支援の構成要素、類型化に関する研究
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23530801
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
横堀 昌子 青山学院女子短期大学, 子ども学科, 准教授 (10289879)
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Keywords | 家庭養護 / 里親養育 / 里親支援機関事業 / 里親支援機関 |
Research Abstract |
平成24年度は、すでに前年度より制度化され制度本実施となった里親支援機関事業の展開の他に、里親支援においては、乳児院・児童養護施設といった社会的養護施設に里親支援専門相談員の配置が始まった、大きな動きが生じた年度となった。また、児童家庭支援センターの業務にも里親支援がもりこまれ、都道府県市里親会にもピアサポートの立場で里親支援が期待されるなど、これらのすべてが「里親支援機関」として機能する期待が政策的に示された年度となった。さまざまな里親支援担当者が、里親支援が本来業務である児童相談所にプラスして用意されたことになる。しかし、里親支援機関事業をすでに手がけてきた施設のレベルでは具体的な課題とともに支援活動の成果が実感され始めた様子であるが、一方新規参入の施設等は、何をどう支援することが里親支援なのかという戸惑いが見え隠れする時期であった。そこで、本研究では、以下のことを手がけた。 (1)前年度に引き続き自治体関係者、社会的養護関係者へのヒアリングを継続実施した。(2)里親家庭、養育支援ニーズの把握を引き続き行った。(3)里親支援担当者への支援、スーパーヴァイズをめぐる課題の検討を定例で行った。(4)里親支援機関事業の先行事例の検討とその整理を通し、事業の成果および課題の確認を手がけた。(5)施設による里親支援・地域支援の可能性と課題に関し、平成23年度の本研究における成果および筆者が研修講師を担当した里親支援の全国研修において主催者・参加者の了解を得て収集した全国の実践事例、職員の抱える里親支援への意識を整理・考察し、学会発表を行った。(「里親支援機関事業をめぐる一考察~施設受託型の事業の課題を通して」、第13回日本子ども家庭福祉学会全国大会,単独)、(6)里親ソーシャルワークのあり方に関して関連研究会に参加、里親支援の構成要素や理論化に向けた課題を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(理由) 平成24年度は、里親支援の体制に政策的に再編があり、里親支援機関として里親支援機関事業受託者や引き続き里親支援が本来業務である児童相談所が手がける体制から、里親支援機関事業受託以外の(あるいは事業受託とも重複する形で職員が新規配置となり、連携のあり方を模索する施設も含め)社会的養護施設、児童家庭支援センター、都道府県市里親会もまた「里親支援機関」として機能させるという体制の変更が加えられた。そのため、状況を見定めつつ、実質各関係者・担当者がどのように機能し始めるか、何をどう支援することが里親支援なのか、里親支援機関とは何か、関係者に求められる役割分担や協働のあり方とはどのようなものか、その枠組みや概念、手法の確認作業が各地で関係者により進められ、地域格差も大きいが、筆者も本研究と仕事レベルとの両方で大きくかかわり、模索することとなった。 したがって、研究開始時には想定していなかったこうした状況変化の中で、研究当初に研究手法として描いていた方法に調整を加える必要が生じたこと。加えて、動きつつある里親支援の実践状況を、まずは里親支援機関事業とその他の里親支援機関の関係において見極める必要も生じた。そこで状況把握と関係者からのヒアリングにつとめた年度となった。このため、研究としては自己評価として「やや遅れている」と言わざるを得ない。しかし、本研究の成果の一環として行った学会発表その他、これまでの研究成果の公表と都の活用という面については、まだこうした里親支援に関する研究とその発表が実質少ない中にあって、積み重ねてきた研究と動きつつある現状をふまえた課題の提示、成果の公表であったこともあり、社会的養護関係者・研究者からの反響を得、大きな手応えを得た。社会貢献の面では研究成果が活かされつつあることをここに報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
里親支援機関となった各施設や団体の状況が、あるいは自治体レベルの状況にかなり差異があるため、量的調査を行うことが適切であるか否かについては、精査しながら再検討し研究の深化をはかる。また、平成24年度に様子見段階であったため手がけられなかった事例調査についても、精査しつつ、進めるつもりである。 あわせて、実践の萌芽期に位置付けられる里親支援事業の今後の可能性と検討すべき課題について、そもそも里親家庭の支援ニーズとは何か、子どもに届く支援とはどのような方法論を必要とするのかなど、支援の前提と枠組み、求められる諸要素を整理しながら研究のまとめに向かう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、事態がどう動いていくか状況把握が必要であったため、最低限の研究費の使用しかしないで進めた。が、今年度は、研究をより展開し、成果の取りまとめに近づける年度を迎えているため、計上されている研究費を有効に活用して研究を発展させたいと考える。 今年度は、具体的には、(1)関連する資料の収集(IFCO:International Foster Care Organization の大阪世界大会2013への特別プログラム企画提供といった面での貢献と、大会における本研究の成果の発信を行う。(2)国内外の里親養育・里親家庭支援に関する情報収集、継続して進める関係者へのヒアリング、関係学会・研究会への参加その他)を進める、(3)研究を進めつつ筆者が独自に作成した里親支援機関事業の類型化モデルに基づく先行実践事例調査、その他の事例調査を進める、(4)研究成果の発表(日本子ども家庭福祉学会ほか)、(5)研究成果のとりまとめに向かっての研究成果の整理・検討 の4つを計画している。これらに研究費を活用する予定である。
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