2011 Fiscal Year Research-status Report
自伝的記憶の想起が自己開示・自己注目を介して抑うつ感に及ぼす影響
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23530829
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小口 孝司 立教大学, 現代心理学部, 教授 (70221851)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自伝的記憶 / 自己注目 / 自己開示 / 抑うつ / 国際研究者交流 中国 |
Research Abstract |
研究目的は次のようなものであった。否定的な自伝的記憶の想起が抑うつ感に及ぼす影響を申請者は確かめてきているため、本研究においては、自伝的記憶の想起から抑うつに至るパスにおいて、過去の研究から、媒介変数として自己開示、調整変数として自己注目を想定して、これらの効果を検証する。さらに、否定的な自伝的記憶を想起する場合において、ごく少数であるがポジティヴな効果を見せる調査対象者が以前の研究から確かめられた。これは自伝的記憶の問題解決機能の使用によるものであると推測しこの効果も検証する。 この研究目的に照らして、次のような研究計画を行っていく予定であった。現在までの文献研究をさらに深める。論文、書籍などを順次購読していく。申請書に示した仮説モデルを精緻化させて調査に入る。仮説モデルの各要因を表す調査項目を策定する。既存の尺度があるものはそれを翻訳して使用する。Buck et al.(2005)の自伝的記憶の機能尺度(TALE:Telling About Life Experience Scale)など。既存の尺度でないものは新たに作成し本研究に用いる。その上で、生成された仮説モデルを検証し、新たに作成した尺度の信頼性、妥当性などを検証するために、トライアルを実施する。調査対象者は、社会人であり、20代、30代、40代、50代の有職者、男女それぞれ50名、合計400名を予定している。調査は信用のある、莫大な調査対象者を有する調査会社に委託する予定である。得られた結果を分析して、項目を確定させ、モデルを決めるというものであった。 この計画に対して、当該研究の基礎となる、自伝的記憶の機能に関する研究を中心に行った。申請通りの規模でのネット調査を実施し、さらに、TALEの信頼性を得るために2度目のネット調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ネット調査は、予定した規模のものを実施し、さらにその一部の調査対象者に再度回答を求め、作成した尺度の信頼性を求めた。また、文献研究などの成果などを盛り込んだ論文を1編公刊し、標記のテーマに関する学会発表も行った。昨年度の成果については、今年度の学会で3本以上の学会発表として公表する予定であり、計画どおり極めて順調に進展している。 それのみならず、自伝的記憶のポジティヴな効果についても、観光研究との関連から検討を進めている。これは当初の研究計画には具体的には盛り込まれていなかったが、調査対象に適した地域に在住している海外の研究者の協力を得て、年度末に調査も実施した。経費は本年度の請求、執行になってしまうが、計画の立案、実施は昨年度に行っているものである。こちらについても、分析を進めながら、今後学会発表を行っていく予定である。 以上のように、計画通り進展していること、ならびに計画には具体的に盛り込まれていなかった海外の研究者と協力して研究を進めていることから、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、研究を進展させていく予定である。ただ、当該プロセスについて、非常に興味深い知見が得られたので、それを進化させるために、プロセスの前半部分に特化してさらに進化させた研究を重点的に行う予定である。 海外の研究者と協力して進めている研究についても、研究結果を踏まえたうえで、さらなる研究の進展を図っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年研究結果から得られた知見を生かし、前年に生成された仮説モデルをさらに詳細に検討し、さらにパネル調査を実施することによって、時系列的な因果関係を明確にする。パネル調査は2回実施する。いずれもインターネット調査によって行う。同一対象者に、1カ月を挟んで2回にわたって回答を求める。調査対象者は、社会人であり、20代、30代、40代、50代の有職者、男女それぞれ50名、合計400名を予定している。2回分なので、のべ800名となる。 1カ月を挟む理由は、その間にさまざまなイベントなどが生じているために、そうしたイベントの要因も考慮するためである。いかなるイベントが想起や抑うつ感と関わるのかを明らかにすることによって、本研究のモデルを拡張して、現実場面への応用可能性を高めるためである。たとえば、休暇にはストレス低減効果が顕著であることが示されているため(cf. Oguchi & Harashima, 2009)、自己注目や自己開示などとどのように関わるかを示すことによって、現実での具体的な方略を模索することができる。観光心理学との関わりを明らかにすることにもつながる。 次年度に使用する研究費の大半は、年度末前に行った海外での調査にかかった費用に充当されるので、研究費に特段の変化はない。昨年度は、物品費にかかる費用を削って調査費用に充当したので、新たな展開ができたが、今年度は何とか研究費をやりくりして、計画以上に展開させている部分の研究も可能にしていきたい。
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Research Products
(4 results)