2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530936
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
津川 秀夫 吉備国際大学, 心理学部, 准教授 (20330623)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 睡眠 / 呼吸 / 不眠症 / 睡眠段階 / 治療 |
Research Abstract |
研究の意義と重要性:本邦では成人の5人に1人が不眠をかかえているとされる。不眠症の治療の中心は薬物療法であるが、服薬に不安をいだく者も少なくない。そこで、本研究では、睡眠改善に向けて安全で依存性のない心理学的手法を開発することを目指している。狭義の不眠症をはじめとして不眠傾向の者に対しても、睡眠改善の具体的方策を提供できるという点で、学術的領域においても社会的領域においてもその貢献度は大きい。 研究の目的:睡眠時における呼吸の特徴について明らかにするとともに、入眠時の呼吸パターンを模倣することで、睡眠に適した心理・生理的状態が喚起されるか検討する。 平成23年度(1年目)の研究実績:各睡眠段階における呼吸パターンの特徴を明らかにすることを目的にした。健常者10名を対象にして、仰臥常態にて脳波・眼電図・筋電図・呼吸音・呼吸波形を測定した。睡眠段階は、Rechtschaffen and Kales(1968)の基準に従い判定した。また、1サイクルの呼吸を呼気・休止・吸気の3相に分けてそれぞれの時間を求めた。 呼気の時間を1として休止と吸気を合わせた時間との比率を求めると、覚醒期は1:2.2、睡眠段階1は1:3.0、睡眠段階2は1:2.9、睡眠段階3は1:2.5、睡眠段階4は1:2.6であった。ここから、睡眠段階1と2においては、〈呼気〉:〈休止+吸気〉が約1:3になり、覚醒期および睡眠段階3と4の呼吸パターンとは異なると言える。すなわち、覚醒から睡眠に移行する段階において、1サイクルの呼吸において呼気が短くなる独特の呼吸パターンを示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度(1年目)においては、睡眠時における呼吸の特徴についての検討が予定されていた。その研究に関しては。実験実施およびデータ分析を終え、次年度に論文化の作業を進める予定である。今回の実験によって、パイロットスタディにおける手続き上の問題点も克服された。実験結果から、睡眠段階1と2に共通する呼吸パターンを見出すことができた。 以上より、初年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度(2年目)は、呼吸模倣を用いた睡眠誘導についての検討が予定されている。呼吸は自律的活動でありながら、意図的にコントロールすることもできる。初年度に明らかにできた、入眠時の呼吸パターンを意図的に模倣・再現することで、入眠に適した心理・生理状態を喚起できるか実験的に検討する。 対象者は、不眠傾向を有する大学生40名を実験群と統制群に分けることを計画中である。呼吸模倣にあたっては、睡眠段階1-2の呼吸を録音したCDを作成し、その音声をもとに呼吸を模倣させていく。 平成25年度(3年目)は、不眠症のクライエントへの本法を適用するなかで、どのような反応が起こるか、本法を導入したことから生じる影響を捉えていく予定である。その成果を踏まえて、睡眠改善を目的とした心理教育プログラムを整える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度(2年目)においては、実験実施およびデータ入力・整理・分析のための人件費をはじめとして、情報収集のための旅費、リーフレットや質問紙作成のための印刷代、論文の翻訳代などを予定している。
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