2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530951
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
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Keywords | モリヌー問題 / 空間知覚 / 倒立網膜像問題 |
Research Abstract |
本研究は、実験心理学における空間知覚の諸問題の歴史をたどり、17・18世紀の西洋の哲学者が扱った問題に19・20世紀の実験心理学者がどのように答えたかを明確にすることによって、西洋近世哲学と実験心理学の歴史的な繋がりを明らかにすることを目的とした。 平成23・24年度には、哲学者(ロック、モリヌー、バークリ、ディドロ、コンディヤック、カントなど)が「モリヌー問題」と「倒立網膜像問題」をどのようにとらえていたかを明らかにした。とくに、モリヌー問題については、ディドロが先天性盲人の開眼手術後の視覚能力や空間知覚の臨床的観察を行なっていることが明らかになった。 平成25年度には、1932年に心理学者ゼンデンの先天性盲人の開眼手術後の空間知覚の文献的研究が「モリヌー問題」についての哲学者の考察を検討する形で行なわれたことを確認した。また、ディドロの盲人の空間知覚についての言及は、実験心理学においては1944年のダレンバックらの盲人の「顔面視」の実験として結実したことも明らかとなった。倒立網膜像問題については、19世紀中半にヘルムホルツが、それまでの哲学的議論を踏まえ、生得的側面と経験論的側面を明らかにする実験の可能性を示唆した。1896年のストラットンの「逆さメガネ」の実験は、倒立網膜像問題について経験的側面を考慮・検討すべきであるというヘルムホルツの示唆の受けて行なわれたことが明らかとなった。 以上のように、西洋の近世哲学の問題意識は、19・20世紀の実験心理学に引き継がれ、いくつかの重要な問題について実証的な検討が加えられたのである。
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Research Products
(1 results)