2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530970
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
河原 純一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (30322241)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 急性ストレス / 注意 / 心的資源 / 知覚負荷 |
Research Abstract |
従来,ストレスは注意資源を消費するため,課題関連刺激のみに注意が集中することで,選択的注意を向上させるといわれてきた。知覚負荷もまた注意資源を消費するため,知覚負荷が高いときに選択的注意は向上し,低いときに悪化するとされてきた。しかし,ストレスと知覚負荷を同時に扱った研究は極めて少なく,ストレスと知覚負荷がともに注意資源を消費するのであれば,両者が個別に注意資源に対して影響するのか,両者が交互作用を起こすのかは明確にはされていない。Braunstein-Bercovitz(2003)は,負のプライミング課題を用いてストレスと知覚負荷の効果を検討した。ストレスと知覚負荷をそれぞれ操作した結果,高ストレス群において知覚負荷が低いときには負のプライミングが消失し,知覚負荷が高いときには消失しなかった。この結果から,ストレスと知覚負荷の両方が高いときは,選択的注意が悪化すると報告されている。しかし,負のプライミング効果は,選択的注意だけでなく,記憶現象としての側面を持つことから,Braunstein-Bercovitzの報告はストレスが注意に及ぼす効果ではなく,記憶に及ぼす側面を反映している可能性がある。そこで,本研究では,典型的な干渉課題を用いてストレスと知覚負荷が選択的注意に与える影響を検討した。フランカ干渉課題と急性ストレス操作実験の結果,ストレスと知覚負荷のどちらか一方が高い場合には干渉量が少なく,両者が高い場合には干渉量が多くなることが示された。この結果は,共通の注意資源がストレスによっても,知覚負荷によっても剥奪を受けること,適度な注意資源が残っていれば却って干渉を生じにくくなることを示唆している。また,過剰な資源剥奪を受けると,標的弁別そのものに向ける注意資源が枯渇し,課題成績が低下することを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ストレス操作が予想以上に効果的であったため,頑健な交互作用が見られ,結果の解釈が容易であった。そのため,当初の計画以上に計画が進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
転籍により,被験者募集の仕方を大幅に変える必要があるので,年度当初は実験がやや滞ることが見込まれる。それを最小限におさえるために,積極的に募集をかけ,被験者を動員するシステムを整備したい。特に被験者謝金と実験補助者に投資し,実験を円滑に進められるようにしたい。初年度の急性ストレス操作は効果的であったため,これを踏襲し,別タイプの認知課題に及ぼすストレスの影響を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として被験者謝金,および実験補助者謝金を拠出する割合が高くなることが見込まれる。転籍先ではコースクレジット制が整備されていないことがわかったため,被験者を獲得することが困難になるためである。設備は概ねそろっているため,ほとんど拠出する見込みはない。
|
Research Products
(4 results)