2011 Fiscal Year Research-status Report
高等教育構造の地域間格差の形成過程に関する比較地域史的研究
Project/Area Number |
23530998
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50230694)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 高等教育機関 / 地域間格差 / 1940年代 / 医学専門学校 |
Research Abstract |
本年度は、1940年代に公立高等教育機関を設置した地域を対象に調査を実施した。 具体的には、1940年代前半に全20校におよぶ公立医学専門学校を設置したすべての地域について、(1)議会側と当局側のどちらが設置を持ちかけたのか、(2)両者はそれぞれどのような役割を果たしたのか、(3)設置認可に至る過程でどのようなことが議論されていたのか、ということを解明しようとした。 その結果、(1)ほとんどの地域において議会側が医学専門学校設置の口火を切っていたこと、しかし、そこでは、新聞報道によって焚きつけられた「官立医学専門学校誘致ブーム」とでもいうべき状況の発生にみられるように、設置形態は公立に限定されずむしろ官立誘致を求めるものが多かったこと、(2)そうした多様な形態を含みこんだ要求を公立という形に落とし込んでいったのは当局側であったこと、(3)その過程で設置形態、無医村問題への対処、費用・資材の調達方法、男子校か女子校か、地方利益の確保が論点となっていたことを明らかにした。 これらの事実は、民衆を代表した議会側が地域課題への対応を高等教育機関の設置により果たそうとしたのだが、そこでは「官立ブーム」という、ある意味、偶発的な機会への便乗が設置への直接的な契機となっていたこと、また設置への動きが始まってから設置形態などの具体的な課題が検討されるようになっていったことを示している。 こうした公立高等教育機関の設置につながる地域での初期的な動きを詳細に明らかにできたことは、1940年代における高等教育機関設置の地域間格差の発生メカニズムの解明に向けての一つの基本的な手がかりとなると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定どおり「1940年代に公立高等教育機関を設置した地域の検討」を課題として作業を進めて来た。その結果、1940年代前半、公立医学専門学校という一定の限定は付さざるを得なかったが、このとき設置された全20校について検討し、論文というかたちで成果を公表することができた。また、設置各地域の基礎的なデータについての整理も進めている。これらのことから「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、官立高等教育機関を誘致しえた地域、高等教育機関を設置しなかった地域について調査を進め、最終的に地域間の比較検討を実施する。 平成24年度は、青森、岩手、群馬、鳥取、宮崎の各県について、県史、県教育史、議会史、個別大学史などに基づいて事前に調査を進めることで検討対象県を絞り、その県の基礎データを整理する。 次に当該県の県立図書館、県議会図書室、公文書館などにおいて県会会議録および地方新聞を調査・収集する。 そのうえで、当該県における官立高等教育機関の誘致運動について明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、県史、県教育史、県議会史、個別大学史、および関係図書を引き続き購入する。いずれも基本的に古書店にてセットで購入するために、物品費として70万円を計上した。 対象県の県立図書館、県議会図書室、公文書館で調査を実施するための旅費として11万円を計上した。 資料の整理・複写の費用のために人件費・謝金として9万円、その他として10万円を計上している。
|
Research Products
(1 results)