2013 Fiscal Year Research-status Report
高等教育構造の地域間格差の形成過程に関する比較地域史的研究
Project/Area Number |
23530998
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50230694)
|
Keywords | 医学専門学校 / 地域間格差 / 高等教育機関 / 1940年代 |
Research Abstract |
2013年度は、1940年代に官立高等教育機関を誘致・設置した地域を対象に調査を実施した。官立高等教育機関の設置の可能性が出現した時点で地域でその誘致運動が起こったとみられるからである。具体的には1944年3月に設置された青森医学専門学校について、地方の図書館や議会図書室に所蔵されている新聞記事や県会会議録を始めとした関係資料の調査・収集を行なった。1943年3月に設置された前橋医学専門学校については2012年度に資料の調査・収集を基本的に済ませている。官立医学専門学校としては他に松本医学専門学校および米子医学専門学校が存在するだけなのでこれらを調べることで悉皆調査が可能となるため、2014年度中に継続して取り組みたい。同時に調査の過程で佐賀県と大分県が誘致に乗り出したものの、途中で断念したことが判明した。この点についての解明も2014年度に取り組む予定である。 一方、こうした作業と並行して東京都にある私学教育研究所において「春山順之輔文書」の中から戦前・戦後の高等教育政策にかかわる資料を調査・収集した。 上記の研究・調査を進める中で、2013年度には依頼原稿を執筆・公表した。一つは、日本史研究会の依頼による田中智子『近代日本高等教育体制の黎明―交錯する地域と国とキリスト教界―』の書評である。もう一つは、史学会編『史学雑誌』の「2012年の回顧と展望」である。後者は近現代部分の教育史を担当し高等教育にも言及している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は官立医学専門学校の誘致問題を検討することを課題としてきた。未だ資料の収集・整理の途上にあり、その点について結論めいたものを示すようなまとまった成果の公表も行なっていない。だが、収集した資料の解読・整理については大きな問題もなく順調に進んでおり、新たな課題も明確になってきているため「概ね順調に進展している。」と自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)2014年度は国立公文書館において1940年代後半の高等教育機関の設置認可申請書を補完的に調査・収集し、官立医学専門学校の設置された長野県と島根県について県会や市会の会議録、新聞記事などを調査・収集する。その上で官立医学専門学校の誘致について論文をまとめる。 (2)総力戦体制下の高等教育機関と地域についての論文および官立医学専門学校設置についての論文を執筆・公表する。 (3)設置しえなかった佐賀県と大分県についての史料調査と分析を行ない論文にまとめる。 (4)特定の都市を取り上げて、戦前から戦後にかけての高等教育機関の設置状況についてもまとめる。 (5)以上をまとめて今年度中に報告書を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の途上にあり、一部物品の購入と調査、さらにアルバイトによる資料整理の作業を新年度に先送りしたため。 これまで収集してきた資料の整理および年度収集する資料の整理のためアルバイトを雇用する。また、先送りした調査を今年度集中的に実施する。さらに調査の過程で必要になった関係資料を追加的に購入する。
|
Research Products
(1 results)