2014 Fiscal Year Annual Research Report
高等教育構造の地域間格差の形成過程に関する比較地域史的研究
Project/Area Number |
23530998
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 卓治 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50230694)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 地域間格差 / 高等教育構造 / 公立大学 / 専門学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、戦後における高等教育機関の都道府県格差の淵源をその大増設期だった1940年代とみなし、この時期、高等教育機関が府県ごとに設置されたり、しなかったことに注目して、その原因を解明しようとしたものである。 本年度は、第一に、高等教育機関の大増設期だった1940年代において官公立高等教育機関が設置されなかったか、もしくは設置されても一校だけだった地域(「高等教育機関寡少地域」)に注目し、そこでなぜ高等教育機関が設置されなかったのかということを検討した。そうした「高等教育機関寡少地域」)は栃木、埼玉、福井、奈良、大分、佐賀の6県あったが、そのうち埼玉、大分、佐賀を取り上げて分析した。 本年度において第二に取り組んだのは、1940年代の都市部における高等教育機関の再編動向の解明である。具体的には名古屋市を取り上げ、戦時中に設置された名古屋女子医学専門学校、敗戦直後の旧制度の下で設置された名古屋市立女子専門学校、同時期に名古屋市に移管された名古屋薬学専門学校の三校がどのようにして新制度への適応が図られたのか、その経緯を解明した。 以上を含め、研究期間全体を通して明らかにされたのは以下の諸点である。第一に公立高等教育機関を設置した地域では「官立医学専門学校誘致ブーム」に反応して過熱した地方議会に対して地方当局がその要望を公立へと落とし込んでいったこと、第二に政府側には総力戦下という状況にもかかわらず設置認可の弛緩という状況が生じていたこと、第三に反対に高等教育機関が設置されなかった地域では、財政問題はもとより、複数の高等教育機関像が競合し、地方議会レベルおよび地方当局レベルで調整されない状況がネックとなったことなどである。
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Research Products
(4 results)