2012 Fiscal Year Research-status Report
新教育運動期における学校の「アジール」をめぐる教師の技法に関する比較史的研究
Project/Area Number |
23531005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山名 淳 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80240050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
山崎 洋子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (40311823)
渡邊 隆信 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (30294268)
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Keywords | 新教育運動 / アジール / 空間 / 教師の技法 / 比較史的研究 |
Research Abstract |
本研究では、児童・生徒の「本性」に基づいて彼らの自己活動の余地を保持するために、学校における「アジール」的な時空間(教師の明確な計画性を逃れる曖昧な時空間)の重要性が新教育運動期に認識され始めたことに注目し、新教育的な学校における「アジール」との関わりにおける教師の技法を、新教育運動の影響が最も鮮明にみられたイギリス、ドイツ、アメリカ合衆国を考察対象として比較史的に究明することを目的としている。 新教育的な学校における「アジール」の分析手法は、研究代表者である山名(『ドイツ田園教育舎研究』風間書房、2000年)がすでにその先駆的な研究において示している。本研究では、その際に柱となった①新教育関係者による主要テクストの再解釈、②日記等に基づく当事者たちの証言の分析を行い、さらに必要に応じて③現代に残る新教育的な学校の観察・インタビュー・アンケート調査によって歴史研究を補完する。山名がドイツ田園教育舎にのみ限定して行った考察をより幅広く比較史的な考察へと発展させることによって、「アジール」と教師の技法に関する新教育運動全般に関する結論の導出を試みる。以上のような課題を設定して、目下のところ研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者、研究分担者ともに、年度開始時に立てた計画に沿って、研究活動を続けることができた。分担に従ってアメリカ、ドイツ、イギリスに関する各報告を柱として研究会を構成した。そのほか、アジール研究者として著名な舟木徹男氏を招き、本共同研究に関する報告を行っていただくと同時に、今後の研究方向性について貴重な助言・示唆を得ることができた。平成24年度の研究成果一覧において確認されるとおり、アジールと教育に関する理論的な検討はかなり進んだといってよい。 年度初めには計4回の研究会開催を予定していたが、日程調整の関係で3回の研究会を開催し、各自の研究成果を報告すると同時に、その内容について検討を行った。第3回の研究会では、3,4回合同研究会として通常よりも2倍の時間をとってより綿密な検討を行った。 しかしながら、予定よりも研究が遅れているところもある。アメリカ合衆国に関する研究がより体系的な新教育的学校のアジール性を解明しつつあるのに対して、ドイツ及びイギリスにおいては個別の事例に関する分析は進んでいるものの、体系的な考察がさらなる課題としてまだ残されている。史料・資料の制約などが研究遂行上のおもな障害となっているが、今後は関係する国々の研究者との連絡をより密にとりながらこの問題を克服し、体系的な比較史的考察にまで到達したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、共同研究の最終年度である。次の3点に焦点を絞って活動を行う予定である。 (1)アジールという観点から教育的事象について検討を行うための理論的考察をまとめる。この課題については、主として研究代表者である山名が担当する。 (2)これまでの調査を基盤としつつ、アメリカ合衆国、ドイツ、イギリスの間で比較検討を精緻化する。「現在までの達成度」で述べたとおり、そのような比較検討のために必要な各国における調査を引き続き充実させる。 (3)以上の成果を集大成し、今年度の学会(日本教育学会大会を予定)において報告を行うと同時に、年度末には報告書としてまとめて公にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の経費は、主として国外の調査旅費、学会報告の旅費、研究報告書の作成費などに多くを当てる。 国外の調査として、今年度は山崎がイギリスに向かい、新教育運動との関わりにおいて「アジール」と教師の技法に関する考察を深める。山崎は、すでに本テーマに関連する重要なイギリス人研究者とも密なコンタクトを取っており、彼らの助言・示唆をとおして調査の深化が期待される。 学会報告には研究代表者および分担者が全員参加する予定である。そのための旅費が必要となる。 研究成果を冊子として印刷するため、その経費が必要である。
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Research Products
(9 results)