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2012 Fiscal Year Research-status Report

フランス第三共和制期の政教分離(ライシテ)とモラルサイエンス問題

Research Project

Project/Area Number 23531019
Research InstitutionShokei Gakuin College

Principal Investigator

太田 健児  尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (00331281)

Keywordsデュルケーム / ライシテ / スピリチュアリティ / 集合表象 / 社会実在論 / メタ倫理学 / モラル・サイエンス / 宗教
Research Abstract

初年度は1)モラルサイエンス成立以前の「ライックな道徳教育論」、2)モラルサイエンスの成立(デュルケーム前期作品の時系列順的解読)、2年目は2)モラルサイエンスの成立(デュルケーム中期作品の時系列的解読)という課題に取り組んだ。以上二年間の研究により次のような点が解明された。
1)モラルサイエンス成立以前には二つの道徳教育論の系譜が存在した。一つは宗教も否定せず自己修養論的な徳育論である。他方はデュルケームに代表されるメタ倫理学的立場に立つモラルサイエンスの系譜である。2)後者の系譜の解明にはデュルケームの道徳教育論解明が必須である。そのため彼の作品を時系列的に読みほぐし、その全体像を再構成していく作業が伴う。そこから解明された事はまず、前期道徳論では中期以降の道徳教育論あるいは社会学理論のキーワードや理論スタイルがほぼ出来上がっていた点である。3)また「社会」という独自の概念提示により、ライシテ(所謂政教分離)解決の切り札としていた事が明らかになった。4)デュルケーム中期道徳教育論が、宗教権力側・右翼・国粋主義との拮抗関係にありながらも、ネーション問題、ナショナリズムとの両立問題を視野に入れていた事も明らかになった。5)特に『道徳教育論』では宗教的戒律に代替するものとして「規律の精神」、神の存在に代替するものとして「モラル・リアリティ」が提示されていた事、宗教自体を否定せず、スピチュアリティという科学との棲み分け原理を提示していた事、以上が解明された。6)デュルケームは教育学者であり社会学者であったが、その社会学研究の成果である「社会実在論」「集合表象論」などが道徳教育理論に応用されている事が解明された。
以上から、教育史及び思想史の全面的書き換え、デュルケーム研究史におけるデュルケームの全く新しい解釈とオリジナリティの変更とが可能となった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

初年度は1)モラルサイエンス成立以前の「ライックな道徳教育論」、2)モラルサイエンスの成立(デュルケーム前期作品の時系列順的解読)、2年目は2)モラルサイエンスの成立(デュルケーム中期作品の時系列的解読)という課題に取り組んだ。
1)モラルサイエンス成立以前には二つの道徳教育論の系譜が存在した。一つは宗教も一つの思想・歴史とみなし否定せずに最後はカントの倫理学説に立脚した自己修養論的な徳育論である。他方はデュルケームに代表されるメタ倫理学的立場に立ち、神性概念も俎上に乗せるモラルサイエンスの系譜である。2)モラルサイエンスの立場であるデュルケームは、前期道徳論において、その後の(中期・後期)道徳教育研究あるいは社会学研究のスタイル形成がみられ、ほぼ前期にそれらの輪郭はできていた点が解明された。またその後の研究の着想・キータームの萌芽も多数発見された。3)「社会」というキータームはデュルケームにおいてはかなり独自の定式で使用されている。実は社会概念提示により、ライシテ(所謂政教分離)の一方の側の宗教的世界観を排除し、他方の側のアナーキーで相対主義的な個人主義をも排除できる論理として創出された事が明らかになった。4)デュルケーム中期道徳教育論が、ネーション問題、ナショナリズムを取り入れた政治哲学をも指向していた点も判明した。5)特に『道徳教育論』での「規律の精神」、「モラル・リアリティ」、「スピチュアリティ」というキータームがライシテの産物であった点も解明された。6)デュルケームはその社会学研究の成果である「社会実在論」「集合表象論」などの着想を道徳教育理論に応用されている事が解明された。以上が二年間を通して当研究の実績である。

Strategy for Future Research Activity

25年度の研究計画は以下の通りである。
1)社会学分野のデュルケーム及びデュルケミアン研究と当該研究との照合作業。特にデュルケームの代表的キータームがその道徳教育論に応用されている事が解明されたわけだが、それらのキータームに関する最新の研究、先鋭的な研究は社会学分野で顕著だからである。このような照合作業を行う事によってより完璧なデュルケーム道徳論の理論構造の解明が望めるからである。
2)哲学分野と社会学分野とのインターフェースの研究。分野が違うという事だけで済まさず、大胆に合体する事により、新しい哲学、新しい社会学、新しい道徳教育理論の創出が可能となるからである。しかし単に融合する事は困難である。そこで哲学分野でかつての京都学派の田邊元がカントの構想力の論理の研究で、フランス社会学の習俗研究やデュルケミアンたちの理論を導入していた点に着目し、その理論構造を解明し、哲学と社会学とのインターフェース創出の論旨となす。
3)最新の哲学研究・倫理学研究の渉猟。この作業が伴って、初めてデュルケームのモラルサイエンス、ライックな道徳の今日性が明らかになる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

上記の研究計画に従い、以下のような使用計画である。
1)文献購入①社会学分野のデュルケームあるいはデュルケミアン研究書。②哲学史、哲学研究書、倫理学史、倫理学書(京都学派に焦点を当てたもの及び最新の哲学研究、倫理学研究)
2)研究報告書を200部作成
3)文献収集のため各大学図書館訪問
4)仏文、英文での報告書要旨の作成のためのネイティブとの打ち合わせ等

  • Research Products

    (3 results)

All 2012 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] フランス第三共和制期世俗的道徳教育論の諸相VII2012

    • Author(s)
      太田健児
    • Journal Title

      尚絅学院大学紀要

      Volume: 第63号 Pages: 59-69

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] フランス第三共和制期世俗的道徳教育論の諸相VIII2012

    • Author(s)
      太田健児
    • Journal Title

      尚絅学院大学紀要

      Volume: 第64号 Pages: 87-100

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 『宗教生活の原初形態』におけるカテゴリー論再考

    • Author(s)
      太田健児
    • Organizer
      デュルケーム/デュルケミアン研究会
    • Place of Presentation
      上智大学文学部

URL: 

Published: 2014-07-24  

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