2011 Fiscal Year Research-status Report
学校管理職養成の「費用対効果」研究-韓国校長資格研修をてがかりに-
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23531069
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
元兼 正浩 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (10263998)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 校長人事 / 資格研修 |
Research Abstract |
本研究は、次世代スクールリーダーをどのように養成するかという喫緊の課題認識にもとづき、そのコストパフォーマンスをいかした力量形成のシステム構築をめざすものである。我が国の教育界ではひしめく団塊の世代退職後の管理職候補者確保とその力量形成は深刻な課題であるにも関わらず、いまだ教育センタ-等での短時間の研修が主流となっている。これに対し、1960年代から資格研修を制度化してきた大韓民国では組織的に進めてきており、しかも行政機関が大学との連携をとってアカデミズムの場で実施している。現政権になり、その重要性に鑑みてこれを270時間から360時間に増加させており、その実施方法が改めて注目されている。約3ヶ月近くに渉る期間、最も多忙とされる教監(教頭)が不在となる学校現場のコスト、また受講者である教監自身のコスト、そして教授陣はじめスタッフや諸資源を拠出する大学側のコスト、さらには行政の経済的コストに対し、それに見合うだけのパフォーマンスが挙げられているのかを検討することにより、我が国でのこうした連携型管理職養成の可能性をさぐることが研究の目的である。 初年度であった2011年度はまず報告者のサバティカル期間を活用して、ソウル大学校附属総合教育行政院で開催された「校長資格研修」にその開会式から閉会式までの期間(およそ3ヶ月)を継続的に参与・観察することができた。講師1人1人に許可を求め、可能な限りビデオ撮影も行っている。また、受講者に対するインタビュー、そして研究院長や関係スタッフに対するヒアリング調査も行うことができた。ネットワークの乏しい中で関係を構築することができ、受け入れを認めていただいた関係者に心より感謝している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まずは上述したように昨年度、二ヶ月半の校長資格研修に継続的に参与観察できたことの成果はきわめて大きかった。これはサバティカル期間でないと不可能な体験であった。許可の得られる限りのビデオ撮影を行い、受講生とディスカッションするなどして生の声を聞き取ることができた。ただ残念なことにサバティカル終了後は以前にも増して研究時間確保が困難になっており、撮りためたビデオの分析やテキストの翻訳作業などが滞ってしまっている。なかなか追調査に行く機会もとれず受講生とせっかく築いたネットワークも生かせないでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性はいくつかある。まずは「校長資格研修」を中心とした大韓民国の校長人事政策の全体像を把握して韓国校長人事システムの特質を捉えていくことである。同時に教育財政システムや地方自治論なども視野にいれて韓国教育行政研究を理論的に展開していくことも求められている。 他方で、費用対効果に関する経済学的先行研究に学び、コスト概念をひろく整理していくなかで本研究テーマの理論的枠組みを構築していくことも課題となる。 また、受講者がその後、学校長に昇進してどのような学校経営を行っているかについては時間をつくって韓国ソウル市内の小中学校をフィールドに調査研究する必要がある。また、さきの校長資格研修自体の分析も韓国語に堪能なチームを構成して取り組んでいく予定である。幸い、報告者自身も韓国研究センター兼任教員に就任し、韓国人留学生も多く集まってきているため、その体制は構築できるところにある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まずは韓国語に堪能なチームを構築するために謝金が多く必要となる。また、上記のようにソウル市内のフィールド調査のための旅費も同行者の滞在費をも含め、かなり必要となる。場合によって地方都市(公州、釜山等)への訪問調査費も必要となる。 学会発表や資料収集のための国内旅費も必要となる。 昨年度収集したデータの整理や分析や調査のために高性能ノートPCも必要である。いずれにせよ上記研究の進捗状況に合わせて臨機応変な対応が求められる。
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