2012 Fiscal Year Research-status Report
学校管理職養成の「費用対効果」研究-韓国校長資格研修をてがかりに-
Project/Area Number |
23531069
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
元兼 正浩 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (10263998)
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Keywords | 資格研修 / 費用効果 / 専門職基準 / 韓国教育行政 / 学校管理職 |
Research Abstract |
本研究は「学校管理職養成の「費用対効果」研究-韓国校長資格研修をてがかりに-」と題し、学校管理職(なかでも校長職)、そして費用対効果(費用効果分析)、大韓民国・校長資格研修の3つをキーワードとしている。その基礎的な研究作業として校長職のスタンダード(我が国では「校長の専門職基準」(2012年一部修正版)の到達点と課題の整理を行うとともに、これを用いたケースメソッド事例を作成することによって学校管理職「養成」の新たな可能性を検討した。次に、教育行政領域における費用効果分析の可能性(研究アプローチとしての有効性の検証)の追究を行い、これについて実際の事例分析に用いることでその方法論的活用可能性を提示した。そしてこれらの「応用問題」としての韓国・校長資格研修の現状と課題についてのインタビュー調査(2012年8月)を行った。これは教育科学技術部担当事務官のみならず、2011年度、ソウル大学校教育行政研究院で校長資格研修を受講した公立・私立の教監(教頭)や校長に対しても実施することができた。 したがって、2012年度の研究成果として、以下の構成内容による研究成果中間報告書を執筆・作成することができた(発行は2013年5月)。まず「校長の専門職基準」(2012年版)に対する批判的考察を行うことによって今日的な校長の資質力量をめぐるスタンダードについての理論的な到達点について確認した。次に、教育行政分野における費用効果分析の有効性について、具体の事例を用いて①費用効果、②費用便益、③費用効用、④費用実現可能性といった手法の援用可能性を提示した。最後に、インタビュー調査の記録をもとに現時点での韓国の校長資格研修の状況を報告した。もちろん3つの柱はまだしっくりと絡み合っているわけではないが、最終年度の調査研究に向けての分析枠組みをつくるに必要な基礎作業となることを期して行ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は校長資格研修の追跡調査を行うとともに、課題であった費用効果分析の方法論的な可能性についても検討に着手することができた。費用効果分析は誤解も多いため、先行研究の枠組みにしたがって、改めて研究分析を行い、そうしたオルタナティブ提示型研究の可能性について整理することができたことは教育行政研究としては画期といえる。公共選択論の一つとして教育行政を捉えなおす契機となりうるからである。また、360時間から半減された校長資格研修に対する教育科学技術部の戦略をヒアリングによって浮き彫りにすることもでき、最終年度に向けての下地を整えることができたことは幸いであった。
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Strategy for Future Research Activity |
さきの3本柱について各々検討を深める。1つめの校長養成については専門職基準の視座を基にさらにケースメソッドなどの方法に関する効果性を検証することで「費用対効果」を検証する。なお、2つめの費用対効果については、まず6月の日本教育経営学会(筑波大学)において共同発表を行い、その手応えをさぐる。3つめの韓国校長資格研修については、2013年の最新情報を入手するとともに、2011年からの校長資格研修の変遷を整理し最終報告する。これらの作業によって3つの柱が絡み合っていく最終成果報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本科学研究費の2年次としての中間報告書(副題-教育行政の費用効果分析の可能性及び「校長の専門職基準」の再検討-)全137ページを当初3月末に発行予定であったが、年度を跨ぎ、次年度5月に発行する。また、それに基づく学会報告を研究協力者の院生たちと共同で6月上旬に行うため、予算の繰り越しを行った。次年度は韓国校長資格研修受講者のその後の追跡調査を行うとともに、最終年度にあたるためこれまでの研究の成果をまとめる最終報告書やホームページの作成などに研究費をあてる予定である。
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Research Products
(4 results)