2012 Fiscal Year Research-status Report
米国の州と市長による教育行政の包摂と学校民営化政策の導入に関する調査研究
Project/Area Number |
23531087
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 茂久 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50205506)
|
Keywords | 教育統治 / アメリカ合衆国 / 市長主導教育改革 |
Research Abstract |
平成24年度は、シカゴを事例とした研究を継続し、特に研究課題にかかわって、その総括的な評価の一部について、学会での個人研究発表と学会でのシンポジウム発表を行なうとともに、研究雑誌をとおして2本の論文を公表した。具体的には、シカゴで市長主導教育改革が行なわれた歴史的経緯、現代教育改革のアジェンダとしてのニュー・アカウンタビリティ政策の影響について分析した。さらに、市長主導教育改革がいかなる帰結をもたらしたのかについて詳細に分析した論文を公表した。教育改革の「成果」として、市の教育当局は学力、留年政策、教育財政、教員組合との関係、などそれぞれについて公表するとともに、市民も一定の評価を行なっている。ところが、同一の事実に関して、解釈が異なる場合もある。何人かのシカゴをフィールドとした研究者は、シカゴ教育当局の公表する「成果」に懐疑的である。「懐疑」の内容分析を同論文において進めた。 すなわち、学力や財政について、統計数値に関して解釈が異なることや、投下される教育費総額が増大したとしても学力への影響が見出されないことなどについてシカゴ改革批判論者は明らかにしている。 もっとも重要な論点として、シカゴでの市長主導による教育改革、つまり教育統治改革が、教育における公正性、民主性、専門性にいかなる影響を及ぼしているのかについての評価である。この点に関しても、シカゴ改革の批判論者は厳しい評価を下しており、こうした視点も含めた多様な観点からの教育統治改革の評価こそ、今後とも明らかにされなければならない研究課題について提示することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に訪米して学校を訪問し、インタビュー調査を行い、インタビューの文脈と理論研究の成果との関連性について分析しつつあること。 これらの分析が、翻って、市長主導教育改革の成果との関連を一定程度持ちうる見通しが付いたこと。 十分に研究課題に関連した文献を入手できたこと。 以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のなかに、教育政策の特徴としての民営化政策が含まれている。市長主導教育改革と民営化政策のとの親和性について、米国研究者による文献で部分的に触れているが、決して十分なものではない。そのために、平成25年度において、事例対象としてのシカゴ、ニューヨークにおける教育民営化政策、特にチャータースクールの導入と営利EMOによる学校運営の実態について、分権いっそう幅広く渉猟するとともに、実態について分析および検討を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、平成23年度と同様に、訪米調査を予定している。大学の夏期休暇中を利用して訪米し、主に、教育民営化の実態について、Education Management Organizationと呼ばれる営利及び非営利の学校教育運営組織を訪問して、その方針と課題について聞き取り調査を行う。予定である。
|