2011 Fiscal Year Research-status Report
日本社会における大学及び大学生の位置づけと社会的期待に関する歴史的・実証的研究
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23531134
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
杉谷 祐美子 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (70308154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 優治 千葉大学, 普遍教育センター, 助教 (50434254)
小島 佐恵子 北里大学, 一般教育部, 講師 (40434196)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大学 / 大学生 / 言説 / 社会調査 / 総合雑誌 |
Research Abstract |
本研究は、日本における大学及び大学生の社会的位置づけを検証し、大学教育機会の適正規模と大学・大学生に対する公財政支出への社会的支持の現況と可能性を検討するものである。平成23年度は、以下の2つの研究課題に取り組んだ。 課題(1)では、戦後日本における大学及び大学生の社会的位置づけの歴史的変遷と、現代日本社会における大学・大学生の社会的イメージを検証するため、世論の形成に影響を及ぼす可能性のあるメディアの言説を分析した。具体的には、大学・大学生との親和性が高く、各時期の社会的諸課題を取り扱うオピニオン誌とされる総合雑誌のうち、代表的な『中央公論』、『文藝春秋』、『世界』の3誌を取り上げ、戦後から現在までの「大学」「大学生」をめぐる言説とその担い手を検討した。さらに、大学進学率の上昇と大学改革が進行するなか、ユニバーサル化という大きな転換期を迎える90年代以降に焦点をあて、前述の3誌のみならず、現代の若者や大学生までも広く射程に含めた、比較的大衆的な一般雑誌である『AERA』、『週刊東洋経済』、『サンデー毎日』を取り上げ、大学・大学生をめぐる言説の多面性を浮き彫りにした。 課題(2)では、平成24年度に実施予定である現代の大学・大学生・大学政策へのイメージや社会的期待等を尋ねる質問紙調査のための準備として、調査方法の見直し、調査の規模、調査対象地域の検討を行った。社会調査の手法とデータ収集の信頼性に関する先行研究や専門家からの助言などを参考にし、十分に協議した結果、業務の効率性、データ収集の信頼性、研究経費の制約等に鑑み、サンプリング、調査票郵送、調査票回収、データ入力等の作業を一括して調査会社に業務委託することになり、それに伴って、研究費の使用計画も変更することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)「大学及び大学生の社会的位置づけの歴史的変遷の検証」は、当初の予定通り、順調に研究が進んでいる。とりわけ、先行研究であまり扱われていないような多種多様な雑誌記事の分析を行っている点、また、時期的には、高等教育のユニバーサル化を迎える大学の変革期に焦点を当て、現在にかけての大学・大学生イメージの変容までをも明らかにしようとしている点は、これまでの大学論・学生論に関する研究のなかでも意義深いといえる。さらに同研究は、課題(2)の社会調査の前段階として、世論形成に影響をもつメディアの言説を分析したものであり、将来的には社会調査の結果と比較して、両者の大学・大学生イメージに一致やずれが見られるかを考察して、研究に発展性をもたせることが期待できる。 課題(2)「大学・大学生の"社会的イメージ"と社会的期待の実証的分析」については、当初の研究計画と概ね相違はないが、平成24年度に実施予定である社会調査を遂行するにあたり、業務の効率性、データ収集の信頼性、研究経費の制約等に鑑み、当初の計画を変更することになった。予定していたサンプリング台帳の作成などには着手できなかったが、社会調査に関わる実務のほとんどを調査会社に委託することになり、調査実施時期の変更などをすることなく、次年度予定の調査計画をすべて円滑に進められる目処は十分に立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)の研究成果は、平成24年5月に北海道大学で開催される大学教育学会第34回大会において、「雑誌記事にみるユニバーサル化時代の大学・大学生のイメージ(1)、(2)」と題して報告し、問題提起を行うことになっている。また、これまでの研究に引き続き、資料収集と整理を続け、学術的言説と一般メディア言説の整合性を検証したいと考えている。さらに、学会報告において得られた専門的知見なども踏まえて、研究を一層深化させ、論文にまとめる予定である。 課題(2)については、都道府県別にみた"大学進学率"、"大学立地"、文部科学省による"全国学力・学習状況調査"の結果などを勘案し、都市規模などを考慮した上で比較可能な2都道府県、複数の市町村を対象地域に選定する。先行研究はもとより、課題(1)の研究成果なども踏まえ、質問紙調査票を完成させ、秋以降に社会調査を実施する。調査会社には、対象者のサンプリング、調査票郵送・回収、データ入力等を委託する。その際、調査対象者の個人情報の取扱いには、各種関連法令の遵守と細心の注意を払うように促す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の通り、当初の研究目的・研究計画と概ね相違はないが、社会調査の進め方を変更することにした。平成24年度に実施予定の社会調査に関しては、研究代表者・研究分担者がアルバイト等を利用して実施するよりも、実働作業を調査会社に一括して委託したほうが、より効率的で信頼性の高い社会調査を実施できると判断したからである。 これにより、調査会社に支払う業務委託費が当初の計画より大幅に増大するため、平成23年度に予定していた予算執行は極力抑制し、3年間にわたる研究費総額の大部分をこの業務委託費に当てることになった。平成25年度に請求する金額は減るものの、当初の計画通り、同調査により得られたデータの分析と3年間の研究の総括、および成果発表は可能である。 ただし、調査結果の解釈のために、対象地域の情報収集、教育委員会等への訪問調査を行う当初の計画については、今後、研究経費の使用状況と調査時期などを踏まえ、見直しないし規模縮小等を検討する。また、申請時に印刷・製本を予定していた紙媒体の最終年度報告書については見直し、電子ファイル等の代替案を検討する。
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