2012 Fiscal Year Research-status Report
日本社会における大学及び大学生の位置づけと社会的期待に関する歴史的・実証的研究
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23531134
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
杉谷 祐美子 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (70308154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 優治 千葉大学, 普遍教育センター, 助教 (50434254)
小島 佐恵子 北里大学, 一般教育部, 講師 (40434196)
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Keywords | 大学 / 大学生 / 大学政策 / 社会調査 / 言説 |
Research Abstract |
本研究は、日本における大学及び大学生の社会的位置づけを検証し、大学教育機会の適正規模と大学・大学生に対する公財政支出への社会的支持の現況と可能性を検討するものである。 平成24年度は、課題①「大学及び大学生の社会的位置づけの歴史的変遷の検証」を続け、大学教育学会で研究成果を発表した。社会的諸課題を取り扱う月刊総合雑誌3誌と比較的大衆的な週刊誌3誌を取り上げ、戦後から現在まで、特に90年代以降に焦点を当て、「大学」「大学生」をめぐる言説を比較検討した。分析の結果、各誌の特徴はありながらも、90年代以降のユニバーサル化のなかで、総合雑誌では世代間ギャップを背景に大学・大学生が「問題化」され、週刊誌では「大学ランキング」の台頭にみるように、「大学」言説の消費者マーケットを拡大する傾向がみられた。こうした結果は、大学・大学生をめぐる言説の多面性と世論への影響力を明らかにした点に意義をもつといえる。 また24年度は、課題②「大学・大学生の“社会的イメージ”と大学・大学生に対する社会的期待の実証的分析」を中心に進めた。都道府県別の大学数、進学率、全国学力・学習状況調査、近隣都道府県との地理的関係性をもとに、大都市近郊の2県(千葉県、佐賀県)において、住民基本台帳に基づいて無作為抽出した20歳以上の一般市民を対象に、郵送による「大学・大学生・大学政策に関するアンケート調査」を実施した(発送数2,400件、24年10~11月)。調査の結果、大学教育には不信感と期待が入り混じった評価がなされる一方で、大学の量的規模や大学進学の在り方は、想定されている大学観によって見解の相違がみられた。このように、大学や大学生について社会全体に共通したイメージが存在しないことは、現代日本において社会的支持を得るための大学の在り方が単一ではなく、大学政策が直面している複雑さを示した点で意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①「大学及び大学生の社会的位置づけの歴史的変遷の検証」は、当初の予定通りに研究が進んでいる。研究成果も大学教育学会第34回大会で発表をして、意見交換などを踏まえ研究の深化を図ってきた。高等教育のユニバーサル化を迎える大学の大きな変革期に焦点を当て、従来の先行研究ではあまり取り上げてこられなかった、各雑誌による特性の違いや大学・大学生が「問題化」「消費化」されるプロセスを明らかにしようとした点において、意欲的な大学論・学生論の研究として位置付けられる。 課題②「大学・大学生の“社会的イメージ”と社会的期待の実証的分析」は、社会調査を効率的・効果的に遂行するにあたり、調査に関わる実務を調査会社に委託するように計画を変更した。しかし、対象者のサンプリングや調査票の作成も滞りなく、調査対象者の個人情報の取扱いにも十分に留意して、予定通りの時期に相当数の規模の調査を円滑に実施することができた。マスメディア等が行う世論調査では直截的な設問が多いなか、本調査では大学政策の在り方にまで踏み込んだ考え、またその基盤となるような大学への期待や大学観を明らかにする設問構成となっており、今後は一層幅広く深い分析が期待できると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題①歴史的検証については、前年度の学会発表や質問・意見等において得られた専門的知見なども踏まえて、研究成果を論文にまとめる予定である。課題②実証的調査では、質問紙調査から得たデータの分析を進めて、高等教育関係の学会で発表することになっている。また、調査結果の解釈の妥当性を検討するために、調査対象地域における情報収集と訪問調査を計画している。 さらに、平成25年度は最終年度として、課題①と課題②を統合することを試みる。第一に、世論形成に影響をもつメディアの言説分析と社会調査の結果との間で、両者の大学・大学生イメージに一致やずれが見られるかを検討する。第二に、申請書において課題③とした大学と大学生の量的規模の在り方と、大学及び大学生への公的な財政支援に対する社会的支持の現状と可能性を検証する。その成果を学術的知見として整理するとともに、政策的含意を導き出すことを最終目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
課題②実証的調査を中心に進めつつ、課題①から課題③まで、全体の研究成果をとりまとめるために研究費を使用する。 課題②の研究成果は、平成25年5月に広島大学で開催される日本高等教育学会第16回大会において、「大学・大学生・大学政策に対する世論の現状分析」と題して報告することになっている。また、調査結果の解釈のために、対象地域(千葉県、佐賀県)において情報収集のための調査を行うことを計画している。これらのための旅費として研究費を使用する。 残りの研究費に関しては可能な範囲で、全体の研究成果をまとめ、公表することを目的に、研究成果の印刷・製本を行う予定である。
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Research Products
(2 results)