2012 Fiscal Year Research-status Report
小・中学生の「言語力」を育成・評価する方法の実証的・実践的研究
Project/Area Number |
23531176
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松友 一雄 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (90324136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 浩治 武庫川女子大学短期大学部, 文学部, 講師 (30583207)
牧戸 章 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (40190334)
大和 真希子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (60555879)
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Keywords | 言語パフォーマンス / 教師のインターベンション / 言語能力 / コミュニケーション能力 / 教師の実践的力量形成 / 教員研修開発 |
Research Abstract |
本研究では、小学生の「言語パフォーマンス」の質を把握するための観点として、①教師と学習者のコミュニケーション、②学習者個人の言語能力、③学習者相互のコミュニケーションの三つに焦点を当てて研究を進めている。この三つの観点からそれぞれの研究実績を以下に説明する。 「観点①教師と学習者のコミュニケーション」については、特に教師の行う「インターベンション」が学習者の言語パフォーマンスの質を向上させる働きを持っていることに着目した研究を進めた。特に小学校の授業の中で行われる教師の「インターベンション」を抽出し、学習者の言語パフォーマンスに与える影響を分析することによって、教師の「インターベンション」を類型化するとともに、教師が学習者の言語パフォーマンスのどこに目を向けているのかという点を明らかにした。この研究によって、教師の授業におけるコミュニケーション能力の具体的な内実が明らかになり、授業力向上のための研修プログラムの構築に役立つ知見が得られた。 「観点②学習者個人の言語能力」については、授業の中で学習者が行う説明や発表の内容を抽出し、語彙や概念の使用状況、論理的枠組みの有無と種類などの観点から分析し、結果として「言語パフォーマンスの質」がどのように向上しているのかという点を捉えるための基礎調査を進めた。引き続きこの観点での分析を進め、学習者の言語パフォーマンスの質を表現内容の質からより分析的に把握するための観点を作成することにつながる。 「観点③学習者相互のコミュニケーション」については、特に学習者同士のやりとりの変化に着目し、相互交流が深化発展していくためのきっかけとなるものが何であるのかという点を現象的に探っていく研究を進めている。本年度はさらに学習課題との関係性や参加している学習者の意識の変容との関係性を観点に加えた分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に策定した三つの観点それぞれにおいて具体的な分析の観点を明らかにしながら、対象となる学習者の言語パフォーマンスや授業実践そのものの映像及び音声データが幅広く収集できた。これによって基礎調査はほぼ終了し、継続的に収集は続けるものの分析と考察に焦点化した研究を行うことが出来る段階に至った点は本年度の大きな達成点である。 また、特に観点①で対象とした「教師のインターベンション」に関しては、「学習者の言語パフォーマンス」との関係性を観点に類型化が進み、授業の中で教師が行う学習者の言語パフォーマンスに対する「見取り」の重要性を指摘するとともに、看取るポイントを具体的に抽出することで効果的な教員研修コンテンツの作成に着手することが出来た点は当初の予定を超える成果であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎えるに当たり、三つの観点それぞれの対象に対する分析と考察を進めていくことに加え、三つの観点を統合し、「言語パフォーマンスの質」を把握するための観点として類型化と系統化を行う。また、各観点の具体的な方策については以下の通りである。 「観点①教師と学習者のコミュニケーション」については、「教師のインターベンション」を対個人、対学習集団の二つに分けて分析を進め、教師が対話する学習集団をどのように組織していくかというプロセスに分析の対象を移す。これによって教師の授業におけるコミュニケーション能力の具体的な内実が明らかになり、授業力向上のための研修プログラムの構築を目指す。 「観点②学習者個人の言語能力」については、引き続き同じ観点での分析を進め、学習者の言語パフォーマンスの質を表現内容の質からより分析的に把握するための観点を作成する。 「観点③学習者相互のコミュニケーション」については、さらに学習課題との関係性や参加している学習者の意識の変容との関係性を観点に加えた分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「観点①教師と学習者のコミュニケーション」については、授業ビデオの分析が主たる研究の方法になるため、高性能な映像処理機能のあるパーソナルコンピュータを購入し、分析及び考察の効率を向上させる。 「観点②学習者個人の言語能力」については、類似する海外の研究成果や知見を加味することでより妥当性の高い分析を行うために書籍購入を行う。 「観点③学習者相互のコミュニケーション」については、学習者のつぶやきや仕草など、相互コミュニケーションの実態をより詳細に把握する必要があるため、デジタルビデオカメラや集音マイクなどの機器を購入する。
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