2011 Fiscal Year Research-status Report
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23531179
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岡田 匡史 信州大学, 教育学部, 教授 (30194369)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | ヨーロッパ / 鑑賞教育 / テキスト / 図像学 / 図像解釈学 / 読解的鑑賞 / 図像学的読解メソッド / キリスト教絵画 |
Research Abstract |
第1期は,「図像体系の構築」を研究の柱とした。 平成22年度末開催の第33回美術科教育学会(富山大学)の口頭発表で取り上げた,ヒューホ・ファン・デル・フース「ポルティナーリ祭壇画(中央図)」に続き,ジョヴァンニ・ディ・パオロ「天地創造と楽園追放」を読解的鑑賞の対象作品に選び,読解的メソッドを適用した鑑賞方法について研究した。絵の図像学的読解における様々な切り口を検証する為,図像学関係の諸種事典類とテキスト(主に聖書)で画中要素の意味を調べ,個々を日常的・文脈的・解読的と称す基本的3視点+調査から得られる有益な新視点の計4グループにまとめた解釈総覧表を作成した(これにより,美術の鑑賞授業で活用可能な図像学資料の一部を提供できた)。また,E.フェルドマン創案の4段階批評方式を改良した「6段階鑑賞法」を考案・提起したことで,指導プログラムと読解的鑑賞メソッドの具体案を示せた(これは現場で役立つと思う)。以上の研究成果は論文化し,査読を経,『大学美術教育学会誌』第44号pp.143-150.に収載された。 平成23年度末開催の第34回美術科教育学会(新潟大学)の口頭発表では,前記2作を踏まえ,ジャンティーレ・ダ・ファブリアーノ「マギ(東方三博士)の礼拝」を選び,1話が順番に,2話が同時進行的に,複数の話が交錯して進む事態が,1枚の画面にどう集約・組織されるかを検証した。また,時間構造の学習も読解的鑑賞の一局面と位置付け,異時同図法,継起場面の齣絵的連接(裳画[プレデッラ]),メダイヨンの活用等に関し,現時点の研究成果を発表した。 寓意図像集(エンブレム)との関わりが深い17世紀オランダ風俗画・静物画や,象徴的作法に優れるレオナルド・ダ・ヴィンチへの関心から,関連企画展も鑑賞した。観察・視覚的分析・解釈の諸成果を,今後の研究の基礎とする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
◎ジョヴァンニ・ディ・パオロ「天地創造と楽園追放」に関し,「図像体系の構築」の根幹を成す,種々画中要素の図像学的意味をまとめた解釈総覧表を作成できたから。◎E.フェルドマン創案の4段階批評方式(観察・記述,視覚的分析,解釈,判断・評価)を改良した「6段階鑑賞法(調査と再解釈の2つの段階を新設)」を考案できたから。◎第1期終盤で,第2期の研究主題となる絵とテキストの関係を論じる為の作例として,ジャンティーレ・ダ・ファブリアーノ「マギの礼拝」を選び,それを読解・鑑賞する研究にも着手できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
第2期は,「テキスト研究」が柱となり,ジャンティーレ・ダ・ファブリアーノ「マギの礼拝」における絵とテキストの関係(時間構造も含む)を重点的に研究し,論文にまとめる。加えて研究の効果的推進を図り,本作実物をウフィツィ美術館(フィレンツェ)で鑑賞する計画も立てている(写真・印刷物・画像データ等では,どうしても絵の実質を捉え難い)。文化理解も,作品読解上の重要なファクターとなり,読解的契機に富み,かつ,文化的背景を映す祭壇画を中心に,第2期に現地鑑賞を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第2期は,読解的鑑賞の対象候補の絵を初め,祭壇画を重点的に現地鑑賞する計画を立てており,旅費として480,000円を当てた。第1期の差引額:103,760円は,海外出張を計画している第2期に必要な為,繰り越した。
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Research Products
(2 results)