2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531237
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 友子 岩手大学, 教育学部, 教授 (00322959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 憲治 岩手大学, 大学教育総合センター, 教授 (40422068)
HALL James 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80361038)
西館 数芽 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90250638)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 災害文化 / 津波防災教育 / 命てんでんこ / 地域 / 体験の語り継ぎ / 歴史的形成 |
Research Abstract |
<意義・重要性>岩手県三陸沿岸とスリランカを対象地域とし、津波被害の構造的把握と防災・減少に向けたコミュニテイの内発力に焦点を当て、津波災害文化の形成と伝播を明らかにし、津波防災教材を開発と地域と協働した津波防災教育のモデル開発を目的としていたところ、採択前に東日本大震災が発生した。被災地において救命・復旧・復興が同時進行する中での研究は、迅速かつ実証的な必要がある。本研究が災害研究として新たな理論的枠組みを提示するとともに、被災地に対して示唆を提供することは極めて重要である。<内容>手法:震災前の調査地域を対象とした民族誌的調査、マスコミ情報・公的情報の活用、学校及び地域との協働活動の実施。調査内容:1.被害実態の量的把握-岩手県沿岸部小中学校での犠牲者ゼロ→津波防災教育の有効性・学校立地の課題 2.救命の鍵の分析-中学生が幼児・高齢者を救助→自助・共助・公助の組み合わせの重要性→生き方としての「命てんでんこ」の実践。情報伝達に課題。3.「災害文化」の検証―紙芝居・石碑の建立・校歌→津波と闘う先祖を称える校歌は子ども達の精神的支柱。神社・寺院の立地は歴史的に形成・被害少 4. vulnerabilityの検証―高齢者の犠牲多、地域の特質の理解の寡多、偏見(「津波太郎」「津波残り」等の差別用語)5.復旧・復興の調査・活動-津波防災教育(以前の防災教材の修正・再活用、教材配布、出前・実験授業の依頼・実施・分析)、学校と地域の協働による文化的行事→防災として、心のケアとして、新たな災害文化の創造として重要。教員の「公僕としての使命」や「同僚性」を高めることが鍵。<成果>津波常襲地にあった災害文化は、東日本大震災によりその姿を表し、復興に向け新たな発展をしようとしている。災害文化の醸成と継承が減災に大きく効果があること、防災教育が極めて重要であることが実証的に分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由:震災の発生前から岩手県沿岸部の調査を実施し、教育・研究を行っていたため、採択直後から発信していくことができた。震災前のデータを持っていたことと調査による人的ネットワークが基となって、学問的には統計的処理に加えて民族誌的考察を行うことができ、「災害文化」の存在を明らかにすることができた。また、津波防災についての教材化もすぐに行うことができ、復興に直接関わる形での実践的研究を進めることもできている。震災直後からこのような理論的側面と実践的側面から調査研究を進めることができたため、種々のシンポジウムや出版の依頼もあり、それに対応することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
「災害文化」の形成・醸成の理論構築を図る。「災害文化」を過去の災害体験のみでなく復興という未来をも志向するものという仮説を持つ。その検証のために、今後、津波防災教育の在り方及び教材開発、被災学校の復興に向けての歩みに直接に関与しながら学校教育に加えて学校と地域の連携についても調査研究の対象とし、自立的な復興のあり方を研究する。また、復興の一つの柱として、漁業を中心とした生業の復活と復興も調査する。海外の災害研究者とも情報交換をし、新しい概念の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被災地での調査のための謝礼・旅費、教材開発のための教材作成費と謝礼、学校・地域との連携のための謝礼・旅費、海外への発信するためにIT環境整備と翻訳料および謝礼、国内での発信および情報交換のための謝礼・旅費を主な使用とする。
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Research Products
(17 results)