2011 Fiscal Year Research-status Report
発達障害者の方がむしろ優れている職務開発のためのエビデンス研究
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23531306
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
仁平 義明 白鴎大学, 教育学部, 教授 (10007833)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発達障害 / 注意欠陥/多動性障害 / 自閉症 / 職業 / モーゼ錯覚課題 / 校正課題 / エラー発見 |
Research Abstract |
誤りを発見する課題の一種である,「モーゼ錯覚」課題を使って,広義の発達障害のうち注意欠陥/多動性障害傾向者が有利に働く課題があるかどうかを検討するアナログ研究を行った.モーゼ錯覚課題は,問題自体に誤りがあることに気づくかどうかを見る,トリッキーなエラー発見課題である.このエラー発見と ADHDとの関係について非臨床群の学生群の分析を行った.WHOのADHDチェックリストの因子分析の結果,(1)因子1「話のコントロールの悪さ」,(2)因子2「忘れやすさ」,(3)因子3「身体的多動」,(4)因子4「思考の多動」,(5)因子5「持続のコントロールの悪さ」の5つの因子が抽出された.そのうち「思考の多動」因子について,平均因子得点が気づき群の方が錯覚生起群に比べて有意に高かった(p <.05).この結果からは,従来考えられていたようにADHDのすべての側面が種々の課題にマイナスに働くのではなく,仮題によっては,一部の側面はむしろプラスに働くことが確認できる.加えて,モーゼ錯覚の課題を変え,別な群についても交差妥当性のための研究を行った.さらに,自閉症傾向者に有利な可能性がある校正課題の作成を行い,自閉症傾向と校正能力との関連について探索的研究を行った.この校正課題は,表層的な誤りと意味・文脈上の誤りの二種類を含むものであり,前者は自閉症の特徴を考えると自閉傾向がむしろ有利である可能性が考えられた.自閉症傾向の測定は,バロン=コーエンによるAQを用いた.AQと校正でのエラー発見能力については,複数の大学の母集団でさらに検討を継続するよう体制を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発達障害者の方がむしろ優れている職務開発のためのエビデンス研究のスタートとなる,注意欠陥/多動性障害傾向についてのポジティブなデータの確認を行うことができた.複数の大学での交差妥当性研究を実施することができ,さらに自閉症傾向者にとって有利な課題である校正課題の作成を行った上,これも複数の大学での実験を行う段階まで達成できた.ただし,当初想定していた海外での研究成果発表までは至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
注意欠陥/多動性障害傾向についてのデータをさらに蓄積するとともに,自閉症スペクトラムにある障害とエラー発見のパフォーマンスについても対象者をふやし詳細な確認を行う.とくに注意欠陥/多動性障害傾向の場合と同様に,自閉症傾向のどの側面がプラスに働くかを分析していく. 発達障害者の職業に研究成果を反映させるために,他大学の研究者と共同のシンポジウム「発達障害者の職の可能性をさぐる」を開催し,発達障害者に有利な職業の可能性を考えることとする. 本年度の研究成果は,海外のジャーナルに投稿するよう論文の作成を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,以下の研究実施に研究経費を使用予定:(1)注意欠陥/多動性障害傾向者に有利な課題であるモーゼ錯覚課題による検討を継続・データの蓄積,(2)自閉症スペクトラム障害傾向者に有利な校正課題による研究,(3)それ以外の新たな,注意欠陥/多動性障害傾向者及び自閉症スペクトラム傾向者に有利な課題についての探索的研究. このほか,研究を発展させる契機および成果発表のために行う「発達障害者の職の可能性をさぐる」シンポジウムの開催経費. また,本年度は積極的に成果の論文発表を行う予定であり,その作成や掲載料の経費も要する.
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Research Products
(2 results)