2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540066
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩谷 隆 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90235507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 耕二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60229078)
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Keywords | 測度距離空間 / リッチ曲率 / 曲率次元条件 / オブザーバブル直径・距離 / ピラミッド / ラプラシアンの固有値 |
Research Abstract |
昨年度,証明に成功した曲率次元条件の安定性定理と固有値の不等式を論文にまとめて,Geometric and Functional Analysis に投稿し,掲載が決定した. 今年度の研究として,Gromovの測度集中に基づいた測度距離空間の理論の解明を進め,予定していたほぼ全ての部分について満足のいく理解に到達した.現在,本を執筆中で,出版社とも連絡をとっている. さらにこれに付随した新しい研究として,球面の半径と次元が動くときの極限空間について調べ,以下を証明した.半径が次元のルートより小さいオーダーのときは,レビ族となること.半径が次元のルートより大きいオーダーのときは,無限消散すること.半径が次元のルートと同じオーダーのとき,ガウス測度をもつ無限次元l_2空間に収束すること.これらの結果は楕円にも拡張されると思われ,それについても調べている.さらに複素射影空間の場合にも新しいアイディアを得たので,それらが解明できた時点で論文としてまとめる予定である. これとは別に,院生の小澤龍ノ介氏との共同研究を開始した.ピラミッドの不変量について考察している.測度距離空間の重要かつ基本的な不変量として,オブザーバブル直径とセパレーション距離があるが,これらを測度距離空間全体の空間の完備化の元や,さらにコンパクト化の元,つまりピラミッドに対して定式化することを考察中である.これがうまく行けば,昨年度に証明したk-レビ族の極限についての定理の証明を大幅に簡略化することが可能であろうと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
曲率次元条件の安定性定理は,当初その証明は困難を極めたが,なんとか証明できた.これは予想外によい研究成果であった.応用として得られた固有値の不等式も,測度集中の分野においてインパクトのある結果であり,Geometric and Functional Analysis という一流誌に掲載が決定した. Gromovの理論の解明については順調に進んでいる.さらに,ここから,球面の極限についての結果や,ピラミッドの不変量についての研究など新しい結果を得つつあり,今後の研究の展開が楽しみである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,楕円や複素射影空間の極限について研究する.楕円の極限は球面の極限とほぼ同じ方法で得られると予想している.この場合も極限は無限次元ガウス測度をもつl_2空間となる.これは一般には測度距離空間となならないが,ピラミッドとしてのバーチャルな空間として実現される.ただし,極限が普通の測度距離空間となる場合もあり,より豊富な例を提供できるだろうと予想している.複素射影空間の極限は,ガウス測度をもつ無限次元l_2空間のホップ作用による商空間として得られるだろうと予想している.これらの証明のキーとなるのは,ピラミッドの間の自然な距離の導入であり,これについては既にまとめてある. もう一つの研究として,ピラミッドの不変量の研究がある.ここでは,オブザーバブル直径やセパレーション距離とオブザーバブル距離との関係を調べることが最初の重要なステップであると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,当初予定していた研究会への出席を取りやめたために生じた.次年度に開催する研究会「確率論と幾何学」の講演者への出張旅費に必要な経費として,平成25年度請求額と合わせて使用する予定である.
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Research Products
(4 results)