2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540080
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中川 泰宏 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90250662)
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Keywords | Einstein・Kaehler 計量 / 幾何学的不変式論 / 安定性 / Kaehler・Ricci ソリトン / Kaehler・Ricci 流 |
Research Abstract |
これまでの研究に引続き,偏極代数多様体の幾何学的不変式論の意味における安定性と定スカラー曲率 Kaehler 計量の存在とが同値になるという予想,いわゆる「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」を中心に研究した. 特に本年度は満渕俊樹氏との共同研究で構成した佐々木・Einstein 多様体に対して,AdS/CFT 対応に関連して重要な問題である体積最小化の議論がうまくいかない理由について考察した.その結果,残念ながら問題の解決までには至らなかったが,問題点がどこにあるかをはっきりとさせることができた. また本年度は Nil・Paffenholz による非対称なトーリック Einstein・Fano 多様体の例の一般化についても考察した.Nil・Paffenholz の例は 7 次元の多様体であったが,彼等の例を高次元化することに成功した.その結果,彼等の例を含む無限個の非対称なトーリック Einstein・Fano 多様体からなる族を構成することができた.実際にはもう少し一般的な状況で構成することができていて,この族に含まれないような例をも構成することができている.Nil・Paffenholz による非対称な 7 次元トーリック Einstein・Fano 多様体は Einstein 計量を許容するが,Chow 半安定でないことが,小野・佐野・四ツ谷により示されていて,「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」において重要な例となっている.我々の構成した高次元の例も,この様な性質を持つことが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nil・Paffenholz による非対称なトーリック Einstein・Fano 多様体の例の高次元化に成功した.Nil・Paffenholz による非対称な 7 次元トーリック Einstein・Fano 多様体は Einstein 計量を許容するが,Chow 半安定でないため「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」において重要な例となっている.我々の構成した高次元の例も,この様な性質を持つことが期待できる. また,満渕俊樹氏との共同研究で構成した佐々木・Einstein 多様体に対して,AdS/CFT 対応に関連して重要な問題である体積最小化の議論がうまくいかない理由について,問題の解決までには至らなかったが,問題点がどこにあるかをはっきりとさせることができた. Tian や Chen・Donaldson・Sun により Fano 多様体の場合の小林・Hitchin 対応が解決された.彼等の方法は錐特異点を許した Einstein・Kaehler 計量を用いた連続法によるものであった.彼等の議論を精査することにより,Kaehler・Ricci 流を用いた小林・Hitchin 対応の研究を進展させることが可能になるのではないかということが期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,Nil・Paffenholz による非対称なトーリック Einstein・Fano 多様体の例を高次元化したものが,Chow 半安定でないことを示したい.これは小野・佐野・四ツ谷による,元々の Nil・Paffenholz による非対称な 7 次元トーリック Einstein・Fano 多様体は Einstein 計量を許容するが,Chow 半安定でないという結果の一般化に当たる. また,トーリック多様体束上での Kaeher・Ricci ソリトンの存在問題の解決を目指す.具体的には,考えている関数空間での解析学的手法を整備してやることにより解決を目指す.次に Kaehler・Ricci 流の観点から,偏極代数多様体(特に Fano 多様体)に対する小林・Hitchin 対応を考察していきたい.Kaehler・Ricci 流の観点から Fano 多様体の安定性に関する考察をした研究はあまり知られていないようである.しかし,「正則ベクトル束に対する小林・Hicthin 対応」の解決が熱流の方程式を用いていたことや,Cao による Ricci 曲率が負または零の時の Einstein・Kaehler 計量の存在の Kaehler・Ricci 流を用いた証明などからも,この観点で大きな結果が得られることは十分期待できそうである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で考察する種々の問題はどれも多分野,特に代数幾何学・複素微分幾何学および解析学(特に偏微分方程式)にまたがっており、多様な情報を収集するためにも,幾何学関係・代数学関係及び解析学関係の書籍を必要とする.また,これらの研究テーマはここ数年で急速に発展してきている.そこで,最新の結果を収集するために,国内外の研究集会に参加する必要がある.よって,2013 年度は,物品費:400,000 円,旅費:500,000 円,人件費・謝金:100,000 円,の使用を予定している.
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Research Products
(2 results)