2011 Fiscal Year Research-status Report
調和写像によるベクトル束と部分多様体の双対性の幾何学
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23540095
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長友 康行 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (10266075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | モジュライ空間 / ベクトル束 / 調和写像 / 表現論 / 反自己双対接続 / 対称空間 / 等径関数 / 国際情報交流、スペイン |
Research Abstract |
今までに、ゲージ理論的観点からコンパクト対称空間内の全測地的部分多様体の組と等径関数を構成し、等径部分多様体に対して定義される不変量がベクトル束とその接続から得られる不変量と関連していることを示した。しかし、この研究で得られた例外的な等径関数から得られる部分多様体の場合には、その不変量を求められなかった。 今年度には、上記した例外的な部分多様体のひとつに対して、その不変量、を求めることに成功した。この対称空間上の等径関数はラドン変換を経由して、野水氏により発見された球面上の4つの相異なる主曲率をもつ部分多様体族に対する等径関数に変換される。 また、四元数対称空間の場合には、ベクトル束と切断から得られる等径関数は、インスタントンという観点からも説明できることがわかった。不正確ではあるが、記述を簡略化するためにあえて言えば、反自己双対接続に対する曲率形式のノルムの2乗が、得られた等径関数と(定数倍と定数差を除いて)一致するのである。インスタントンのモジュライ空間を考慮すると、インスタントンの変形は等径関数の変形に対応するが後者はより対称性が高いために、すべてのインスタントンの変形が等径関数の変形に対応するわけではない。そればかりか、このようにして得られる等径関数はほとんどが、等長変換の作用で同じものとみなせる。ところが、インスタントンはインスタントン数だけその種類があるのに対し、等径関数はその種類が限られていることには注意が必要であり、この対応の解明は、今後の研究に委ねたい。 昨年度に、複素射影直線から複素射影空間へのエネルギー密度一定の調和写像を考察したが、このとき、同変調和写像の法ベクトル束のホロノミー既約分解を理解することが重要な鍵となった。今年度は、一般にコンパクト対称空間からグラスマン多様体への同変調和写像の法ベクトル束のホロノミー分解の記述に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記した例外的な等径関数に対する等径部分多様体の不変量を求められた点はかなり評価できると思われる。 また、インスタントンと等径関数の関係も、常にYang-Mills接続を念頭に置いている本研究においては、ますます発展させるべき課題であると思われるので、その端緒を開いたことは評価できるし、本研究の目的の一つでもある「等径関数(部分多様体)の一般化という視点からも興味深い。 最後に調和写像のモジュライ空間を記述するという観点からは、同変調和写像の法ベクトル束のホロノミー分解の記述は、カギとなりうる進展であるので、この結果もモジュライの構成という研究目的から見れば、着実な進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記したように考察された等径関数はラドン変換を経て、野水氏により発見された球面上の4つの相異なる主曲率をもつ部分多様体族に対する等径関数に変換されるが、主曲率に関しては同じ振る舞いをするものと、何の関係もないように振舞うものが観察された。この現象はそれぞれの第2基本形式に対する固有空間(主曲率はその固有値にあたる)の間に複雑な関連があるためと推察される。今後はこの関連を解明するとともに、ほかの二つの例外的な部分多様体に対しても、その不変量を計算し、主曲率を観察することが重要となるであろう。 また、インスタントンと等径関数の関係であるが、どのようなインスタントンが等径関数に対応するもか、またインスタントンから上記のようにして得られる関数は等径関数の何らかの一般化となっているのかを解明することが今後の課題となる。 最後に、コンパクト対称空間からグラスマン多様体への同変調和写像の法ベクトル束のホロノミー分解を用いて、より具体的な場合に調和写像のモジュライ空間を記述することを実行したい。そして、データを集めた後、一般論の構築へと進んでいきたいと思っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、当該研究費が生じた状況であるが、これはひとえに東日本大震災の影響による。当初は7,8月に海外(イギリス)へ行き、本研究課題の内、特殊ホロノミー群に関する研究打ち合わせを遂行しようと計画していたが、研究費が全額支給されるかどうか不明な状態が続いたので、この計画を断念したという経緯があった。 本研究課題は広範な数学と密接な関連があると考えられるので、多大な人的交流が望まれる。そこで、間接的交流手段として、通信手段のスピードアップを図りたい。また、当然直接的交流が望ましい。これは国内の数学者との交流も念頭にはあるが、やはり海外への発信も大切にしていきたい。成果を発表する機会をできるだけ多くして、本研究に対する注目度を高められれば、必然的に研究交流が増え、本研究のさらなる発展が望める。したがって、海外の研究集会出席、発表が大事だと考えている。(実際、韓国、台湾、イタリア、英国における招待講演は研究交流という面からも有意義なものであった。)他分野の研究者との交流においては、論文等を交換するだけではなく、研究集会やシンポジウムなどにおいて、直接、議論することが大きな成果を得るために必要不可欠である。また直接的な研究交流のための国内旅費が必要である。また多数の具体例による考察が重要なので、計算用紙、ノート代も必要である。 また、海外における研究成果発表は当然のこととして、外国人研究者との情報交換には、電子メールをはじめとしたあらゆる情報手段を確保することが必要となる。その際、最新の結果を最短の時間で入手するためにも計算機用紙代も増大せざるをえない。またそのような情報を確実に確保するためにも光磁気ディスクをはじめとしたバックアップが重要となる。
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Research Products
(1 results)