2012 Fiscal Year Research-status Report
葉層構造に対するThurstonの不等式と接触トポロジーに関する研究
Project/Area Number |
23540106
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
三好 重明 中央大学, 理工学部, 教授 (60166212)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三松 佳彦 中央大学, 理工学部, 教授 (70190725)
高倉 樹 中央大学, 理工学部, 准教授 (30268974)
|
Keywords | 葉層構造 / 接触トポロジー / Thurston の不等式 / 沈め込み分類理論 / h 原理 |
Research Abstract |
3次元開多様体の完全積分可能なベクトル場の積分曲線の定める1次元葉層構造はユークリッド平面への沈め込みの逆像達の成す葉層構造として与えられる.この種の1次元葉層構造に対し,2011 年度迄に得られていた結果の具体的構成に関する成果が得られた.即ち,与えられた向き附けられた結び目がその一枚の葉として実現できる為の必要十分条件を位数2の巡回群を係数とするホモロジー群に関する条件として得ていたが,その十分性の証明(存在証明)には所謂 h 原理と呼ばれる,或る種の超越的な手法を用いている.従って,実際にどのような葉層構造が得られているのかは不明であり,構成的な存在証明は重要である.2012 年度の研究成果としては,実際に或る種の多様体上の結び目に対して,それを繊維として実現するユークリッド平面への沈め込みを構成した.その構成的手法はまだ一般的な枠組みでは有効ではないが,さらに一般化することが期待できるものである. 平面への沈め込みの繊維達による1次元葉層構造に横断的な2次元葉層構造は Reeb 成分を持たず,閉多様体の場合の Thurston の不等式を満たす葉層構造に比せられるべき対象である.従ってそのような葉層構造の存在問題は重要であるが,現段階では予備的観察段階に留まっていると言わざるを得ない. 2012 年 8 月に,第 59 回トポロジーシンポジウムに於いて「3次元開多様体上の絡み目と平面への沈め込み」と題してそれまでに得られていた結果について講演した(招待講演).また,幾つかの研究集会に参加してこの分野の研究者達と意見交換等を行った.現在,これまでの成果をまとめた論文を投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元開多様体上の平面への沈め込みの繊維達による1次元葉層構造であって,与えられた結び目を葉として実現する問題に関し,h 原理による存在定理は得られている.しかし,構成的な存在定理を定式化し証明する事は依然として重要であり,より具体的な設定で様々な応用を導く事が期待される.現段階では或る特別な多様体に対する構成手法の開発を行っている段階ではあるが,十分に一般的な枠組みに適用可能な見込みを持っている. 沈め込みの繊維達による葉層構造に横断的な葉層構造の存在問題に関しても,或る意味で(沈め込みの構成と)同時に考察する事ができる.また所謂真直ぐな沈め込み (straight submersion) に対しては,多様体を3次元ユークリッド空間へはめ込んでその沈め込みを平面への射影として実現する事によって横断的葉層構造(実際,一つの関数によって定義される)を構成する事が考えられる.現段階ではこれらの問題に関して満足のいく結果が得られているとは言い難いが,十分な見通しがあると言う事はできる.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで Thurston の不等式に関連して得られている結果を回転可能葉層構造からより一般な様々な対象へと拡張していく事,例えば典型的葉層構造や小川竜による精密化に対応した研究は勿論重要であり,為されるべき研究目標である.さらにまた,3次元開多様体の平面への沈め込みの繊維達による1次元葉層構造(及びその横断的葉層構造)に関連する対象へと拡げていく事も一つの新たな目標としたい.この方向は今迄のものと少し拡がりの方向が異なるとも言えるが,それが故により興味深い方向であると思える. また,典型的葉層構造に関してはホロノミー亜群のの幾何学,またはその圏論的取り扱いを可能とする理論の建設の可能性を探っていきたい.その為に代数的位相幾何学や圏論に於いて近年盛んに研究され,様々な分野で応用されている多くの概念について適切な観点を得るべく探っていきたい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013 年 9 月に東京大学で開催予定の国際会議 "Geometry and Foliations 2013" 及び中央大学で開催予定の 'B\Gamma School" の組織委員として,外国よりの参加者等の旅費,滞在費等に使用する.また,その他の研究集会,国際会議に参加して共同研究者との研究打ち合わせやその他の様々な分野の研究者達との研究交流の為に旅費として使用したい.また,適宜,必要な書籍等の資料を整備すべく研究費を使用していきたい.
|
Research Products
(7 results)