2011 Fiscal Year Research-status Report
行列係数シュレディンガー作用素のスペクトル解析とその応用
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23540204
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
廣川 真男 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70282788)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ラビ・ハミルトニアン / ジェインズ・カミングス・ハミルトニアン / 回路量子電磁力学 / 結合定数 / 強結合領域 / 超強結合領域 / カイラル性 / 量子相転移 |
Research Abstract |
行列係数を持つシュレディンガー作用素の物理的モデルであり、数学的には非可換調和振動子と呼ばれるハミルトニアンの一例となるラビ・ハミルトニアンに対して、ここ数年回路量子電磁力学と呼ばれる物理実験の結果に見られる、強結合領域と超強結合領域を分ける数理モデルの手法を、カイラル性の中に見られる量子相転移という数学的性質による特徴付けの可能性を示した。この量子相転移は、相互作用の回転項が通常の状態空間に作用するのに対し、対向回転項をカイラル状態空間に作用する回転項とみなしたときに、通常の状態空間とカイラル状態空間にまたがる相転移であり、スペクトル理論的には、エネルギー・スペクトルの準位交差等を引き起こす。この量子相転移の臨界結合定数を数学として計算するとことで、強結合領域と超強結合領域の境目を与える数学的手法の可能性を示した。また、この計算値とベルリン工科大学の Tobias Brandes 教授のディッケの超放射相転移(Hepp-Lieb の量子相転移)の臨界結合定数との間に何らかの数学的関係がある事が分かった。今年度与えた手法では、回転項のみの作る相互作用と対向回転項のみの作るそれぞれの相互作用が、それぞれの物理系のエネルギーを作るために、自由ハミルトニアンを奪い合うパラメータをモデルに導入(分解レートと命名)する事で、ラビ・ハミルトニアンをこれらの2つの物理系に分解し(これが分解レートと命名した理由である)、エネルギー・スペクトルに見られる相転移を数学的に研究したが、このとき、それぞれの物理系のハミルトニアンの非可換性に注目し、この分解レートと結合定数の関係を調べることで、対象とする量子相転移を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイラル性の中に見られる量子相転移を、当初予想し計画をたてた通り、ジェインズ・カミングス・ハミルトニアンが持つ、エネルギー準位交差として現れる量子相転移を用い、通常の状態空間とそのカイラル状態空間にまたがる特徴付けができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
分解レートの導入は、ハミルトニアンの基底エネルギーが作るエネルギー曲線の曲率に自由度を与えるが、この分解レートの最適値を結合定数に応じて決める数学的手法を確立し、ラビ・ハミルトニアンのエネルギー準位交差と擬交差がカイラル性により決められるのかそうでないのかを数学的に見極めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては東日本大震災の影響で、研究協力を依頼しているベルリンのワイエルシュトラス応用解析・確率研究所の研究員、マルセイユにある理論物理学研究所の研究員、そしてオーフス大学の教授の招聘や研究打ち合わせが十分に行えなかった。平成24年度への繰り越し額を含め、国内外の研究協力者との研究打ち合わせ、さらに、研究実績途中経過報告用に100万円程の旅費を、エネルギー・スペクトルの計算用コンピュータ等を含む物品購入費に60万円程を、残りを謝金等に使用する事を計画している。
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