2013 Fiscal Year Annual Research Report
行列係数シュレディンガー作用素のスペクトル解析とその応用
Project/Area Number |
23540204
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
廣川 真男 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70282788)
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Keywords | シュレディンガー作用素 / ラビ模型 / 超対称性 / 自発的超対称性の破れ / ディラック作用素 / 自己共役拡張 / 境界条件 / 量子ビット |
Research Abstract |
1)量子ビットを光で制御する観点から,量子ビットを実現する2準位原子のエネルギーを記述する2×2スピン行列と1モード光子のエネルギーを記述するシュレディンガー作用素のエネルギー・スペクトルに対する数学的研究,さらに,2)制御された量子ビットを輸送する観点から,1つの接合と2本の細線から成る1次元的配位空間上の量子ビットの輸送問題をディラック作用素の自己共役性とその波動関数の境界条件との数学的関係を調べた。後者は本来,対象とする配位空間内での電子の動きは非相対論的であるので,スピンを持ったシュレディンガー作用素を考察するべきであったが,本研究では,まず,スピン無しシュレディンガー作用素,次に,ディラック作用素という順で研究が進み,スピン有りシュレディンガー作用素に関しては次の研究段階へと持越しになってしまった。 1)に関しては,ラビ模型において,基底エネルギー曲線と他の励起エネルギー曲線との間にはエネルギー交差が起こらないことが分かった。また,数値計算から,励起エネルギー曲線に関してはエネルギー交差が生じる事が予想され,この現象を超対称性量子力学の観点から調べた:原子と光子の振動数を調整すると,結合の強さが無いときラビ模型は超対称性を示すが,結合の強さを大きくして行くと,漸近的に超対称性の自発的破れが生じ,これを引き起こすのがカイラル性である事が証明され,この過程の中でエネルギー交差が引き起こされる事が分かった。 2)1つの接合と2本の細線から成る1次元的配位空間上のスピン無しシュレディンガー作用素とディラック作用素の自己共役拡張とそれらの定義域を構成する波動関数が持つ境界条件の特徴付けを行った。この結果により,接合をトンネルするときに生じるトンネル効果特有の位相因子の数学的出現機構を完全に把握し,さらに,その位相因子と量子ビットを実現する電子のスピンとの関係を解明した。
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