2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 洋一 日本大学, 歯学部, 講師 (10219769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 楕円型微分作用素 / シャウダー理論 / Lp理論 / ディリクレ境界条件 / ヘルダー空間 / 解析半群 / レゾルベント |
Research Abstract |
発散形の楕円型偏微分作用素のシャウダー理論をディリクレ境界条件の下で考察した。係数は指数が1未満のヘルダー連続性をもつことを仮定して、レゾルベントの存在とその作用素ノルムの評価を得た。これは、Lp理論において既に得られていた結果に対応する。Lp理論の場合と違って、シャウダー理論では通常のヘルダー空間のノルムでは望みのノルム評価は得られない。この困難は、スペクトル・パラメータの大きさに関連した同値なノルムを導入するという工夫によって克服できた。楕円型作用素が定義される領域は、微分作用素の階数に対応する滑らかな境界を持つと仮定しておけば、領域を局所的に半空間に移すという標準的な手法により、半空間の問題に簡単に帰着できるが、本研究では半空間への写像を単純なものではなく、無限回微分可能になるようにうまく構成することにより、領域の境界の滑らかさの仮定を究極まで弱めることに成功した。その結果、境界が係数の滑らかさよりも1だけ多い微分可能性を持てば、2階だけでなく高階の微分作用素に対しもシャウダー理論が成立するということがわかった。 さらに、シャウダー理論で得られた結果を応用して、楕円型作用素の解析半群やレゾルベントの積分核の滑らかさとその導関数の評価を得た。係数に連続性を仮定した場合は、微分階数の半分未満の滑らかさを持つことは、既知であったが、係数にヘルダー連続性を仮定すると、ヘルダー連続指数の分だけ滑らかさが増すということが解明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、シャウダー理論に関して(1)境界が滑らかな場合、および(2a)係数のヘルダー連続指数が1未満の場合と(2b)1以上の場合を考察することを計画していたが、条件(2a)の下で(i)の場合を扱うのが予期していたよりも難航し、かなりの時間を費やしてしまった。しかし、数学的には十分満足のいく定理を導くことに成功した。 計画の残りの部分であるLp正則性については時間不足のため端緒についたばかりで、核心部分は次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、調査のための出張を実際より2回ほど多く計画していたが、学内業務との日程調整がつかず出張を取りやめたため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 当年度で少し見通しを立てることができた楕円型方程式のLp正則性定理の導出から着手する。難易度の低い方から、(1)非発散形の2m階の楕円型作用素で係数が連続かつ領域の境界がC{m+1}級、(2)同じく係数がC{k}級かつ領域の境界がC{m+k+1}級、(3)発散形の2m階の楕円型作用素で係数がC{1}級かつ領域の境界がC{2}級の場合、という順で調べていきたい。さらに、係数の滑らかさをC{k}級とW{k-1,∞}級の中間と仮定したり、領域の境界の滑らかさをC{k+1}級とW{k,∞}級の中間と仮定した場合への拡張も試みたい。 次にシャウダー理論でのヘルダー指数が1の場合の考察を行う。手順としては、定数係数の斉次作用素の場合に、全空間と半空間で扱った後、その結果を基に変数係数で低階の項を持つ作用素に摂動法によって拡張し、さらに、一般の領域の場合を導く。余裕があれば、ヘルダー指数が1より大きい場合も扱うことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本数学会での成果発表および、国内で開催される研究集会へ数回参加するための旅費を使う。とくに、次年度に使用する予定の研究費が生じた分を調査のための旅費を1回増やすことに活用する。偏微分方程式関連の参考図書を購入する。必要に応じて論文の英文校閲や、論文の別刷、通信費として研究費を使う。
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