2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 洋一 日本大学, 歯学部, 講師 (10219769)
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Keywords | 楕円型作用素 / 正則性定理 / シャウダー理論 / グリーン関数 / レゾルベント / Lp理論 / ディリクレ境界条件 |
Research Abstract |
楕円型偏微分作用素の理論に関して初年度からの継続した研究を行い、次の成果を得た。 1. 楕円型方程式に対するグリーン関数の評価を新しい方法で導出した。楕円型作用素のレゾルベント核は、定数係数で最高階のみの項からなる場合は、主表象から作られる関数のフーリエ変換ととらえることができるが、一般には可積分とは限らないので、従来の方法では少し複雑な議論を要した。新しい方法では、スペクトル・パラメータの積分で表すことで、見通しのよい証明となっている。変数係数の場合もこの方法が有効であることがわかった。 2. 発散形の楕円型作用素に対するLp正則性定理を、領域の境界が従来よりも弱い微分可能性の下で導いた。正則性定理を導く従来の方法は、差分をとる方法であるが、境界の滑らかさが小さい場合には、直接利用できない。そこで、ソボレフ空間にスペクトル・パラメータに関連した同値なノルムを導入し、楕円型作用素を2つのソボレフ空間の間の同型写像である事実をうまく数式化することによって、この困難を克服した。正則性定理は楕円型作用素の同型性から導くことができた。 3. 非発散形の楕円型作用素でも、発散形の場合の議論を修正することにより、類似のLp正則性定理が成り立つことを証明した。 4. 楕円型作用素に対するシャウダー理論は、ヘルダー空間の指数が1未満のときは、初年度の研究で示されていたが、1以上の場合にも領域の境界が十分滑らかであるという仮定の下で、部分的な解決を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、楕円型作用素に関して(i)領域の滑らかさを従来よりも弱く仮定した場合のL_p正則性定理の導出、および、(ii)ヘルダー指数σが1以上の場合のヘルダー空間に対するシャウダー理論の構築を目指していた。これらの基礎として、定数係数の場合のグリーン関数の評価が関係しており、その導出法は既知ではあるが、少しトリッキーな工夫を要する。その容易な導出法がないかは、長年気になっていたテーマであったが、グリーン関数をスペクトル・パラメータについての積分の形に書くことにより、ごく自然に導き出せるという考えに至り、これについて掘り下げて研究を行ったため、当初の予定の研究内容は、やや遅れ気味となった。しかし、楕円型作用素の理論をより見通しよく構築するのに貢献できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で得られたグリーン関数の新しい評価法とLp正則性定理を英文の論文として書き上げることから始める。 楕円型作用素のシャウダー理論では、ヘルダー空間の指数が自然数のときの場合を、領域の境界にあまり滑らかさを仮定せずに扱う。分数指数の場合では、Lp正則性定理で用いた方法を応用して、理論を構築する。 さらに、ノイマン条件下でのラプラシアンの固有関数の境界付近での挙動に関して、ディリクレ条件下と同様の漸近公式を導いてみる。領域が球という特殊な場合に考察することにより、漸近公式の原型を得た後、一般の領域の場合に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、調査のための出張回数と滞在日数を実際よりも多く計画していたが、学内業務との日程調整がつかなかったことから、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 日本数学会での成果発表および、国内で開催される研究集会へ数回参加するための旅費を使う。 偏微分方程式関連の参考図書を購入する。とくに、次年度に使用する予定の研究費が生じた分は、参考図書を充実させるための費用に充てる。 必要に応じて論文の英文校閲や論文掲載料、論文の別刷、通信費として研究費を使う。
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