2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 洋一 日本大学, 歯学部, 准教授 (10219769)
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Keywords | 楕円型方程式 / 正則性定理 / ラプラシアン / リウヴィルの定理 / 熱核 / トレース定理 / ソボレフ空間 / 境界値問題 |
Research Abstract |
楕円型偏微分作用素の理論に関して初年度からの継続した研究を行い、次の成果を得た。 1. 前年度の研究では、非発散形および発散形楕円型方程式のLp正則性定理を係数と領域の境界の滑らかさに関して従来よりも弱い仮定の下で得ていたが、これらの仮定をL∞ソボレフ空間の言葉を用いてより洗練された形にした。 2. 「全平面で調和で有界な関数は定数である」というリウヴィルの定理に対して熱核を利用した証明法を考案した。関数が古典的な微分可能性をもつ場合は、球面平均の性質を使うネルソンによる簡明な方法がある。しかし、超関数の枠組みで扱うときには正則化の過程が必要であった。熱核による証明法は、正則化の過程を組み込めるという利点があり、調和関数は熱伝導において熱平衡に達した状態を表すという物理現象を反映したものになっている。 3. Lp空間の枠組みで考えるとき、ソボレフ空間におけるトレース定理と楕円型作用素の境界値問題の一意可解性は、一般的には局所化と微分同相により半空間の場合に帰着させ証明される。本研究では、領域が単位円のときに円の特殊性を用いて、トレース定理と境界値問題を直接的に取り扱えることを示した。同時に、古典的な枠組みで境界値問題を解くために使われてきたポアッソン核が、Lp空間の枠組みでも有効であることがわかった。単位円での考察は、一般論に入る前に理論全体を概観できる好例となっている。 4. 整数階数のソボレフ空間の複素補間空間について, 村松の第1積分公式を用いて簡潔に証明する方法を考案した。従来の方法として、分数階数の場合にも適用できる村松の第2積分公式による方法があるが、強力な反面、証明がやや複雑になる。第1積分公式による方法では、複素補間法で登場する帯状領域における正則関数を具体的に構成でき、見通しがよくなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で挙げた以外に研究が進行中のものが2つある。 1. シャウダー理論のヘルダー指数が1以上の場合の考察において、分数階のときにはLp正則性定理で用いた方法を応用して理論を構築できる見込みがたった。指数が自然数のときは1のときに帰着できることがわかったが、1のときには完全な解決に至らないものの、核心部分での糸口を見い出すことができている。 2. ラプラシアンの固有関数の境界付近での漸近挙動に関して、ディリクレ境界条件の場合に対応する漸近公式がどのような形になるかをノイマン境界条件の場合に予想し、領域が特別の場合にはその予想が正しいことを証明できた。一般領域の場合には研究が進行中である。 以上のように当初の予定よりも遅れ気味の部分もあれば、アイディアが浮かんだことにより予定を前倒しで進めている部分もある。また、研究途中での予期しない副産物として、研究実績の概要で挙げたリウヴィルの定理の別証明や、単位円におけるトレース定理の直接的証明などが得られたので、全体としてはほぼ順調に研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つを目標に掲げたい。 1. 執筆途中であるLp正則性定理に関する論文と、ソボレフ空間の理論を村松の第1積分公式により統一的に構築する論文を完成させる。 2. ラプラシアンのノイマン固有関数の境界での漸近挙動に関する小沢の予想について、今年度で着想できたアイディアを発展させ、一つの定理の形にまとめる。 3. シャウダー理論のヘルダー指数が1の場合について考察を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査のための出張回数と滞在日数が予定より少なかったことと、執筆にとりかかっていた2編の論文が完成途中だったため、英文校閲や論文掲載料が未使用となり、次年度に使用する予定の研究費が生じた。 日本数学会での成果発表および、国内で開催される研究集会へ数回参加するための旅費を使う。偏微分方程式を始めとする参考文献を購入する。必要に応じて論文の英文校閲や掲載料、通信費として研究費を使う。
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