2014 Fiscal Year Research-status Report
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23540225
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 洋一 日本大学, 歯学部, 准教授 (10219769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 楕円型作用素 / ソボレフ空間 / 正則性定理 / ヘルダー連続 / 滑らかでない境界 / トレース定理 / ディリクレ境界値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
楕円型偏微分作用素の理論に関して初年度からの継続した研究を行い、次の成果を得た。 1. 前年度までの研究では、非発散形および発散形楕円型方程式のLp正則性定理について、係数と領域の境界に関して従来よりも弱い仮定の下で導いている。しかも、有界ソボレフ空間の言葉を用いて定理をより洗練された形にした。今年度は、スケール変換の方法を駆使することにより、証明を見通しのよいものにすることができた。前年度までの方法ではスペクトル・パラメータのベキに細心の注意を払って証明していたが、パラメータが1の場合にだけ証明しておけば、スケール変換によりパラメータが他の値のときの結果はそこから導かれることがわかった。 2. Lp正則性定理に対応する定理がヘルダー空間の枠内でも成立することを、ヘルダ-指数が自然数以外のときに証明できた。言い換えると、ヘルダー指数が1より大きく自然数以外の場合のシャウダー理論を構築できた。領域の境界が滑らかなときは、古くから知られていた結果ではあるが、境界の滑らかさの仮定を究極の階数まで落とせたところに意義がある。今後の課題として、 ヘルダー指数が自然数の場合にも同様の正則性定理を目指したい。 3. 前年度は楕円型作用素のディリクレ境界値問題の典型的な例である、単位円におけるラプラシアンを考え、これに対して一般論で知られている方法よりも簡明で直接的な方法を考案した。今年度は、この方法を単位球へと拡張をした。単位円に比べ単位球での考察が難しいのは、単位円ではその上の関数が直線上の周期関数と同一視できるのに対し、単位球ではこのような性質を持たないからである。村松の積分公式を球に最適化された形で用いることにより、この困難を克服できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では楕円型作用素のLp理論およびシャウダー理論についての研究を3年目までに完成させ、4年目は楕円型作用素の固有値や固有関数に関する研究を目指す予定であったが、Lp理論やシャウダー理論についての研究が進むにつれて、もっと掘り下げて究明したい事柄が見つかり、これらの理論の研究を4年目も継続して行っているため、固有値と固有関数についての研究は計画の半分程度の進み具合である。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つを目標に掲げたい。 1. 今年度の完成が叶わなかったLp正則性定理に関する論文と、ソボレフ空間の理論を村松の積分公式により統一的に構築する論文の2つを完成させる。 2. ラプラシアンのディリクレ固有関数の境界での漸近挙動について、剰余項の精密化を図る。とくに、2次元の領域で小沢の予想に近づく結果を導出する。 3. ラプラシアンのノイマン固有関数の境界での漸近挙動について、ディリクレ条件の場合と類似の結果を予想し、それを導く。
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Causes of Carryover |
学内業務と日程が重なり出張回数が予定よりも少なかった。参考図書はSpringerでの著者割引が適用され、予定額よりも少なくすることができた。執筆が遅れた論文があり、論文掲載料の一部が未使用になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額にて、偏微分方程式を始めとする参考図書を購入する。また、アクセス制限のあるジャーナルでのオープン・アクセス費を支払う。
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