2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540252
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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Keywords | 可積分系 |
Research Abstract |
本研究は,可積分系,特殊関数の理論を拡張し,その応用範囲を広げることを目的としている。2013年度は,可積分系理論の微分幾何学,および数え上げ組合せ論への応用を中心に研究を行い,以下の結果が得られた。 1.平面曲線の運動と戸田階層(梶原健司氏(九州大学MI研究所)との共同研究):Goldstein-Petrichによって,平面上の曲線の長さを変えない変形と変形KdV階層との関係が議論されている。我々は,Goldstein-Petrichの研究を,戸田階層理論の立場から見直すことで,戸田階層のタウ関数を用いた曲線の明示公式を与えた。また,対応する解が(複素)平面上の曲線を記述するためにタウ関数が満たすべき条件をリー代数的視点から調べ,アフィン・リー代数の実形との関係を考察した。これらの結果については論文にまとめ,現在投稿中である。 2.6角形領域の菱形タイリングの分配関数と離散KP階層(田村律氏(立教大学大学院生)との共同研究):平面上の6角形領域を菱形のタイルで敷き詰める場合の数を数える問題については数多くの研究があり,行列積分理論との関係を通して可積分系と結びつく。我々の研究においては,系の分配関数という基本的な量が,係数を非自励化した離散KP方程式のタウ関数のパラメータを特殊化したものとみなせることを見いだした。 3.対称性を持つ6頂点模型の分配関数とKP階層(渡邊拓弥氏(立教大学大学院生)との共同研究):統計力学における可解模型の1つである6頂点模型の分配関数は,ある種の境界条件の下では行列式表示を持ち,そのことを通してKP階層のタウ関数とみなすことができる。一方,組合せ論との関係を通して,適当な対称性の下での分配関数が,行列式およびパフィアンで表されることが知られている。我々の研究では,いくつかの対称性を付加した場合でもKP階層のタウ関数の構造が現れることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微分幾何学への応用に関して,本年度は平面曲線との関係について進展が得られたが,昨年度に得られたアフィン曲面論に関する研究のリー代数的側面を理解することについては,想定通りには進められなかった。また,本年度は組合せ論との関係について進展があり,そちらにも時間をかけたため,超離散系に関する研究にはあまり多くの時間を割くことができず,想定していた進展は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果は,今後の発展における重要な一歩であると考えており,来年度はそれらを押し進めることで当初の計画していた観点との関連も含めて発展させる。 平面曲線における成果は,代数的に見るとアフィン・リー代数の実形と関係している。この視点を押し進めることは曲線・曲面の理論への応用を考える上で重要であるので,当面はsl2型についての分類を完成させることを目指す。 組合せ論における成果はKP階層の理論と密接に関係しており,それらを一般化していくことを次年度の目標にしている
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全体として5年計画であり,当初より次年度にも配分を予定していた。本年度の物品費(プリンタトナーの費用など)が想定を下回ったため,次年度に若干多めの配分となった。 次年度における主たる使途として,研究代表者,および研究協力者が研究打合せ,研究発表等を行う際の旅費が挙げられる。より具体的には,九州大学,北海道大学,京都大学への研究打合せのための出張,九州大学での研究集会参加のための2回の出張である。また,計算機に関する消耗品,および資料整理のための補助記憶媒体への支出も必要となる。また,研究資料としての書籍の購入費としても使用する。
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Research Products
(8 results)