2013 Fiscal Year Research-status Report
銀河のダイナモ機構:宇宙線と磁場が駆動する非線形ダイナミクスの検証
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23540274
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
工藤 哲洋 国立天文台, 理論研究部, 助教 (60413952)
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Keywords | 天文 / 宇宙物理 / 理論天文学 / 流体力学 |
Research Abstract |
磁場は銀河に普遍的に存在し、太陽のような恒星の形成などに大きな影響を与えている。しかし、銀河に存在する磁場の起源はまだよくわかっていない。それを説明するための有力な理論モデルとして銀河のダイナモモデルが提唱されている。研究代表者はダイナモモデルの基本要素としてパーカー不安定性が重要であると考え、その基礎的な性質を調べている。特に、その宇宙線圧力の影響に注目している。宇宙線圧力は昔から銀河において重要であると指摘されていたが、そのための数値シミュレーションはほとんど行われてこなかった。そこで、そのための数値シミュレーションコードを開発し、それを用いてパーカー不安定性の物理を解明し銀河ダイナモに迫ることが本研究課題の目的である。 まず、昨年度に得られた結果を線形解析の結果と比較し、数値シミュレーションで得られていた結果と矛盾しないことが確認できた。つまり、宇宙線圧力の影響が相対的に小さい時には銀河面に対して「ずれ対称」のモードの成長率が大きくなったが、宇宙線圧力の影響が相対的に大きい時には銀河面に対して「ずれ対称」なモードと「鏡像対称」なモードとの成長率はほとんど変わらなかった。次に、非線形段階において、より高解像度で長時間の計算を進めた結果、宇宙線圧力の影響が相対的に大きい時には、少し先に成長したループが宇宙線圧力のため上空で急成長して膨張し、後から遅れて成長してきたループの成長を妨げる現象が確認できた。さらに、成長したループ同士が上空で衝突し高緯度の地点に高密度の領域を形成することもわかった。この高密度領域と実際に銀河面で観測されているフィラメント構造などとの関係を詳しく解析する必要が認識された。 また、今年度は3次元計算の結果も得られた。3次元の場合は2次元と異なり、奥行き方向に成長速度が異なる構造が重なるため、非線形成長の速度が異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
あるパラメータの場合に、数値シミュレーションにおいて予期していなかった数値不安定性が発生した。原因は宇宙線圧力を解くために用いている陰解法の数値計算法のために発生しているということがわかった。しかし、それを回避するためには計算に長時間が必要となり、場合によっては異なる方法を用いる必要があることがわかった。そこで、3次元の計算では異なる方法を用いたが、まだ少し試行錯誤し計算方法を改良する必要があると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元の計算を推進し、非線形段階において2次元計算の結果との違いを明らかにしたい。また、数値計算法について改良する必要があることがわかったので、安定で比較的高速と思われる方法を試みてコードを改良したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は事務手続き上繰り越された物で、実際には25年度に使用されている。 学会や研究集会などへの旅費、論文投稿料、データ保存のためにハードディスクの購入などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)