2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540291
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森川 雅博 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (90192781)
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Keywords | 地磁気反転 / 惑星磁場 / 太陽活動 / 恒星脈動 / 量子力学基礎 / 量子測定 / 集団運動 / スタグフレーション |
Research Abstract |
1.星の活動性に関する凝集・同期モデルの発展。HMFモデルを一般化したスピン結合モデルを更に発展させた。今まで我々が考案したこのモデルは、地磁気反転履歴や惑星、衛星、太陽までの間欠的あるいは準周期的活動性を記述してきた。このモデルを更に一般化して「恒星の脈動」までを記述することに成功した。セファイド型とミラ型のそれぞれに、κ機構と対流機構を表現する簡単なモデルを導入し、それらの結合として、構成全体の活動性のダイナミクスを追った。規則的な脈動から不規則なものまで、星の密度を重要パラメターとして系統的に再現することができた。 2.量子力学における測定装置の物理。凝集を考えるモデルは非常に一般的で、上のモデルを量子化すると、量子力学の測定仮定を記述するモデル(QMR)になる。通常の量子測定理論では、基本的に線形代数の議論であり、重ねあわせから逃れることはできない。測定の本質はこの重ね合わせの排除である。QMRモデルは、測定系と被測定系のトンネル時間の分離から、この重ねあわせを逃れる時間スケール=測定時間を導出した。さらに、パラメターの調整を必要とするが、ボルンの確率規則を近似的に導出することができる。これにより、標準理論に付随する厄介な射影公準を廃して、自律的な測定過程を物理的に記述することができるようになった。 3.凝縮インフレーションモデル。エネルギーの最低値を微調整する一般のインフレーションモデルを超えて、ポテンシャルの負領域を許すモデルを考案した。この場合、ある時刻でインフレーションが急に終了し、いったん宇宙膨張は完全に止まる(スタグフレーション)。このエネルギー零のとき、ちょうど凝縮場が不安定になり崩壊する。従って、宇宙項の微調整が自立的に行われることになる。これはたいていのインフレーションポテンシャルで、エネルギー負領域が少しでもある時に実現する普遍的な様相である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
凝縮宇宙モデルの研究路線上で、当初計画より広い「凝縮」の様相が明らかになってきた。宇宙論だけでなく、惑星・恒星の活動性に関係する重要な様相なので、この開拓に力を入れた。また、凝縮を考察する路線上で、量子力学の測定過程を自律的に記述する可能性を見出した。これは初期宇宙に密接に関わるので、優先して研究した。現在取りまとめ中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.BECの不安定性の数値計算と解析的アプローチ。数値計算の環境が整いつつあるので、それを実行する。特に、不安定性とそのダイナミクスを議論し、SMBHの生成の可能性を追求する。これは銀河のSMBH原初説を確立するための重要なステップであり、解析的なアプローチも併用する。 2.量子測定過程の物理と宇宙初期。自律的量子測定過程は初期宇宙に非常に重要である。同時に、実験室物理においても非常に基本的な問題であり、注力したい。主眼は、いろいろな測定器モデルにおいて、どれだけ普遍的にボルン規則が導出できるかどうかである。同時に場の理論的な議論も進めたい。一般化された有効作用の虚部がどれだけ一般的に統計揺らぎを出してくるかを詰めたい。 3.惑星磁場・恒星脈動のダイナミクスを論文にまとめたい。これは凝縮物理の新しい視点であり、同時に当該分野においても新しいアプローチである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.国際会議への参加と研究発表。今年度は分野境界的な会議に出席して研究を発表し、多様な視点を見出したい。同時にその分野の専門家と集中的な議論をすることも計画している。 2.現有計算機の補強。計算が進むにつれてデータが蓄積する。その効率的な保存と、専門解析ソフトウェアの購入などに使いたい。 3.ワークショップの主催。宇宙を中心に量子論基礎、統計力学基礎の理論を介して、多様な分野の研究者を集めて、発展性のある基礎的視点をテーマにワークショップを企画したい。この準備のために、何人かの講師を大学に呼んでセミナーをしてもらい、ワークショップの展望を広げ規格を固めていきたい。このために費用にも使いたい。
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