2012 Fiscal Year Research-status Report
近未来のニュートリノ実験におけるCP非保存感度最大化
Project/Area Number |
23540315
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
南方 久和 首都大学東京, 理工学研究科, 名誉教授 (00112475)
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Keywords | CP非保存 / ニュートリノ振動 / フレーバー混合 / 牧-中川-坂田行列 / 1-3角 / 加速器ニュートリノ / 原子炉ニュートリノ / 反ニュートリノ モード |
Research Abstract |
2011年6月、T2K実験によって発見された大きい13角の兆候は、その後主にDaya BayおよびRENOの両原子炉ニュートリノ実験の結果によって確証が得られ、2012年前半には約9度の13角測定値が確定した。この急速な事態の進行と並行して、本研究計画の核心的課題である加速器・原子炉ニュートリノ実験の包括的解析によってレプトンCP非保存位相δに対する制限を初めて議論した。(この方法の原理自身は2004年南方・杉山によって指摘されていたものの、実際の実験データに基いての取り扱いはこの論文が初めてであった。)この研究の実行には加速器ニュートリノ実験T2K、MINOS、原子炉ニュートリノ実験Double Chooz、Daya BayおよびRENOの信頼性の高いイベントシミュレーションが必要である。各実験グループとの緊密な連絡によってこれを達成して実験外部の解析としては最も成熟度の高いシミュレーションを実行できた。このコードを使って13角について得られた制限に対する各実験の寄与を明らかにすることによって加速器・原子炉実験の特徴を浮き彫りにすることを試みた。残念ながら、実験データの現状を反映して、レプトンCP非保存位相δに対する得られた制限は弱いもので、物理的な成果として未だ十分満足できる結果とはいえない。(論文はJHEP誌に出版済みである) このCP非保存位相に対するより強い制限を得るために、近未来において利用可能な唯一の方法として最も重要なものはT2K実験の反ニュートリノモードである。今後の10年間を視野において、CP非保存位相感度を最大化するためのT2K実験のニュートリノモード・反ニュートリノモード運転比の最大効率化の問題の解析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、平成24年度は13角にまつわる客観的状況が大きく変化した時期であった。諸実験の急速な進展によって、2012年前半には約9度の13角測定値が確定したといってよい。この事態の変化によって、24年度の研究計画は部分的には予想より早い速度で達成することができた。加速器・原子炉ニュートリノ実験の組み合わせによってレプトンCP非保存位相δに対する制限を得るという作業を実際の実験データを使って初めて実行することができた。この研究の進行と13角測定実験の進行が並行して起こったために、論文の各改訂版の解析結果がこの事態の進行をあとづけ、加速器・原子炉実験の互いの役割が分析結果に投射される結果となった。 一方、T2K実験の反ニュートリノモードの解析は予想された十分な進展をみていない。T2K実験のニュートリノモードは実際に実験が稼働中で、我々の解析はこの実態を踏まえて十分に現実的なシミュレーションが実行できた。一方、反ニュートリノモードは実際のデータが存在せず、イベント検出効率や断面積の誤差など、様々の不定要素が存在する。このため、T2K実験の反ニュートリノモードの解析は十分な成熟度を獲得するに至っていない。当該実験グループと連絡をとり、この課題の解決を目指す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、T2K実験の反ニュートリノモードの解析は十分な進展をみていない。当該実験グループと連絡をとり、この課題の早急な解決を図る。ニュートリノモード解析においての連絡の窓口であった東大横山氏との緊密な連絡を試みる。 この課題をクリアした後には、T2K実験のニュートリノモード・反ニュートリノモード運転比のCP感度についての効率最大化の問題の解析を行う。これは現在利用可能な数少ない可能性の一つであり、近い将来に実行への決断に迫られる重要な問題である。 この目的のために理論サイドの我々に求められる課題として、CP感度表示量の定義の問題がある。CP位相の測定精度や諸実験のCP感度の表示としてどのようなものが良いかについては、これまで様々の議論があり、各種の表示量が提案されたきたが、コミュニティの大多数の信頼を得られているものは存在しない。具体的に、T2K実験のニュートリノモード・反ニュートリノモード運転比の最大効率化の解析結果の表示を念頭に、新しいCP感度表示量を提唱したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画はR. Zukanovich Funchal 氏、P.A.N. Machad氏(サンパウロ大学)および、布川弘志氏 (リオデジャネイロカトリック大学)との強力なチームワークの下に行われている。代表者南方は現在リオデジャネイロカトリック大学に滞在しているため、互いの研究連絡は従来よりも緊密に実行できている。このため、次年度の研究費は、主に代表者による国際会議における研究発表のための旅費に当てる予定である。その他必要に応じて、サンパウロ大学における研究打ち合わせを行う。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Neutrino Oscillation and Neutrino Velocity2012
Author(s)
H. Minakata
Organizer
``What is nu'': From new experimental neutrino results to a deeper understanding of theoretical physics and cosmology
Place of Presentation
Galileo Galilei Institute for Theoretical Physics, Florence, Italy
Year and Date
20120611-20120614
Invited
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