2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540328
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
石川 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 准教授 (90184481)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 良彰 東京経営短期大学, 経営総合学科, 准教授 (50389839)
|
Keywords | 素粒子物理学 / 量子ビーム / 摂動理論 / ファインマン・ダイアグラム / 数式処理 / 高性能計算 / 国際情報交換 / フランス |
Research Abstract |
物質の究極構造を探求する素粒子物理学においては、現在「標準模型」と呼ばれる理論体系が確立しており、実験値と理論的予言が極めて高い一致を示すことが知られている。LHC実験においてヒッグスらしい粒子が発見されたが「標準模型」の正しさを証明したのかどうかはまだわからないところである。ダークマターなど「標準模型」では説明できない未解決問題があり、ヒッグス粒子の性質の詳細検証や新粒子の発見はLHCやILCなど次世代加速器実験の大きな目標の一つになっている。「標準模型を超える模型」の探索が理論・実験両面から勢力的に行われている。 素粒子物理学では、「場の理論」が確立した処方箋として確立し、「模型」を取り扱うことができる。「場の理論における摂動理論」に基づき、計算機上で数値計算まで取り扱うことを可能とするGRACEシステムを開発し、1次補正計算まで完成している。素粒子の性質や素粒子反応における2次補正を計算機上で取り扱うことを行うために、計算機上での定式化について研究開発することが本研究課題の目的である。 本年度は、素粒子物理学の問題としてミュオン異常磁気能率の標準模型における電弱理論における2ループ補正を例として主にプログラム開発を進めた。相当する2ループ・ファインマン・ダイアグラムは1780個あり、2ループのファインマン・ダイアグラムは14種類のトポロジーに分類される。それぞれのトポロジー毎に紫外発散部分と有限の部分の式を取り出すことができる。2ループおよび1ループと繰り込まれた頂点を持つファインマン・ダイアグラムの紫外発散部分が相殺され、計算機上においても繰り込まれることを検証され、計算機上での定式化が正しく行われていることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、素粒子物理学の問題としてミュオン異常磁気能率の標準模型における電弱理論における2ループ補正を例として定式化のプログラム開発を進めた。具体的には以下のような手続きとなる。①GRACEで1780個の2ループ・ファインマン・ダイアグラムは生成する。②2ループのファインマン・ダイアグラムは14種類のトポロジーに分類されるので、それぞれのトポロジー毎に内線のループ運動量を割り当て、2つのループ運動量をシフトして対角化行列を作る。このとき木下らの方法を用いて内線の数の次元の対称行列を求めるやり方を用いる。これは数式の処理が容易になるからである。③分子の計算はGRACEで生成されたグラフからファンマン規則を割りあて数式の処理を行う。④分子のループ運動量によって分けることによって紫外発散部分と有限の部分の式を取り出す。⑤ファインマン変数で書かれた積分を0から1の積分に変換する。⑤数値積分を遂行する。 また、検証のため、2ループ・ダイアグラムのうち、1ループで分離されるトポロジーのものおよび、2点の図形が含まれるトポロジーのものついては、逐次計算する方法を開発し、数値計算で検証した。研究開発の結果、ある繰り込まれた1ループ・ダイアグラムに対応する4種類のトポロジーの数十個のグラフと紫外発散部分が相殺しており、プログラムの正しさを検証した。1780個のファインマン・ダイアグラムの内おおよそ1000個は紫外発散部分を有しており、これらが対応する繰り込まれた1ループ・ダイアグラムとの相殺を確認した。これらはシステムが正しく機能していることを示すものであり、システム研究開発は順調に進んでいると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ファインマン・ダイアグラムを生成する際に、既に非線型ゲージを使ったファインマン規則を使っており、紫外発散部分について、非線形ゲージ項のパラメータを数値的に変化させ、ダイアグラム全体で不変かどうかは検証を行う。 物理的に意味のある有限項の計算を進める。この際、非線形ゲージを検証するための道具として用いる。数値積分は5次元積分となり、数値積分方法についても検討を行う。また、積分変数の取り方にも依存性がないかどうかを検討する。赤外発散が含まれるファインマン・ダイアグラムについては、数値的相殺が大きくなると数値結果の誤差に大きく影響するので、予め相殺することができるかどうか、定式化を考察する。ミュオン異常磁気能率の電弱理路における2ループ補正計算の完全計算は世界未踏であり、既存の一部の計算などとの比較を行う。 なお、これらの研究の発展として以下が考えられる。同じタイプの計算としては、b->sγの補正があり、既存のファインマン規則をCKM行列に拡張すれば計算可能である。これらの計算について考察を行う。既にGRACEでは、超対称性理論(MSSM)の模型で1ループまで計算可能である。2ループ以上については、挑戦的な課題であるが、これを取り組む。またミュオン異常磁気能率については、全部で14トポロジーについて、ループ運動量等について、人間の入力によるものであり、散乱過程など全部で100以上トポロジーある場合の入力方法の自動化について考察を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に、予定より安価に消耗品が購入できた。本年度も連携研究者の工学院大学・中澤宣也先生との定期的な研究打ち合わせを都内で行い研究を進める。また関連する物理関係や自動システムに関係する分野での国際会議・研究会にて研究成果の発表を行う。また引き続き、素粒子理論や計算科学の有識者と会い、調査研究等を進める。
|